mmph『Dear God (Remix EP)』(Beer On The Rug)

mmphによるBOTR055のリミックス盤。『Remix Playground』が一つの曲のみを(複数アーティストで)リミックスしたのに対し、こちらは元EPのすべての曲をリミックスしている。尺も元からあまり変わらず、まさに別バージョンといった塩梅。参加しているメンツ(CTN./Orthodontrix/Hollow Gem/Toiret Status/Ulla Straus)からなんとなく察せられるが、全体的にホラー味が薄まりエレクトリックな質感が強まっている。ホラーあってこそのホーリーと考えるなら、Ullaによる極端に抽象的な最終曲もアリに思える。

Rhucle『Wonderland』(Beer On The Rug)

東京ベースの多作な日本人アーティストのBOTRデビュー。風に揺れるカーテンのようなシンセに自然の環境音が大きくフィーチャーされるビートレスなニューエイジ。全編通してスタイルは変わらないのでよくも悪くも金太郎飴的。シンセサウンドの展開の仕方にはSSW的な構築があるようにも感じるが、リズムで明確に時間が区切られているわけでもないのでなかなか楽曲が掴めない。それでも、大きく分けるなら前半4曲が比較的陽性、後半4曲が陰性のフィーリングを持っている。小さな音量で聴くのも風情がありそうな作品だ。

Aphni『Tabrecn』(Beer On The Rug)

カナダのカルガリーを拠点にしていることくらいしか情報がない。おそらくデビュー作となるEPサイズの作品。神経質なダウンテンポアンビエントを4曲収録。霞がかったアンビエンスや往年のIDMっぽい音色などから、個人的にはSkee Maskを連想する(偶然かもしれないがジャケットも1stの『Shred』に非常によく似ている)。アグレッシブなビートが映えるかっこいいトラックとビートレスで抽象的なアンビエントが交互に配置されている。ボーナストラックを追加してアーティストのBandcampにてNYP

CTN.『Algorithmic Love』(Beer On The Rug)

涼しげなジャケットが印象的なドイツのアーティストの作品。浮遊感のあるコードを軸に展開するアシッドハウスで、4曲20分弱のEPサイズ。アナログシンセサイザーの強みである、自在に変調する電子音を堪能できる。サウンドはもちろんだがコードの印象も4曲で似通っており、全体に強い統一感がある。同じスタイルの楽曲集という意味ではかなり機能的というか、DJなどのツール的な側面もあるような。涼やか&軽やかなアルペジオが全編を彩る#3「Legacy Version 1.1」が個人的な好み。

mmph『Dear God』(Beer On The Rug)

静物を写したゴシックなアートワークがどこか不穏な空気を伝えている。地を這うような重低音と聴き手の恐怖を煽る音の演出が光る、架空のホラー映画のサントラのような作品。過剰に劇的な作曲や、ピアノやストリングスの効果的な起用からは映画音楽の素養も感じられる。ぶっちゃけBOTRというよりBlackest Ever BlackやTri Angleが得意とする音楽性で、実際に後者から翌年にリイシューされている。道中が怖いだけに最終曲のユーフォリックな響きがいっそう美しく映る。一度は通しで体験してもらいたい力作。

Location Services『In Passing』(Beer On The Rug)

前作から約11カ月ぶりの二作目で、どちらもギリギリ2016年内にリリースされている。音楽性もほぼ地続きだが、こちらの方が微妙~に内省の色が濃くなっているような。前作を『Music For Airports』とするなら今作は『On Land』で、際どいレベルではあるが公共感のようなものが減退している。なにかの展示を示したジャケットは相変わらずだが、前作にあったオフィスの環境音はなくなった。メロディーもあるのだが絶妙に頭に残らない音楽で、改めて考えれば展示という概念は「家具」と共通するところもあるかも?とか。

Orthodontrix『First Visit』(Beer On The Rug)

ブルックリンのクィアなアーティストのデビューEP。空間を埋め尽くすマッシブな音遣いが特徴のドリーミーなエレクトロニカ。…というか音像的にはもうシューゲイザーの領域に達しており、言ってしまえば「PC Musicなどのビビッドなサウンドの流行を経た後のUlrich Schnauss」のような音楽だ。楽曲は直情的でエモく、こう言ってはなんだが若者向けな感じがある。蛍光色のスモークが充満したスタジアムで大勢の若者がシンガロングしているような、聴いているとそんな情景が頭に浮かんでくる(インスト作品です、一応)。