2013

Palm Highway Chase『Fantasy Recordings』(Beer On The Rug)

ヴェイパーウェイヴとの関わりが強いレーベルのため、作品に対してもなんとなくそういう目で見てしまうが、今作のクリアーなサウンドと爽やかなフィーリングは明らかに蒸気とは無縁のものだ。奇妙さや悪ふざけへの志向がまったくない、純粋な楽しさにフォー…

Angel 1『Angel Activate』(Beer On The Rug)

Angel 1名義では既に別レーベルから作品を出しているが、ここにきて『Angel Activate』なる意味深なタイトルを持ち出すのは気合の現れだろうか。IDM的なスムースなサウンドと構築的な楽曲が持ち味のエイリアスで、このスタイルが肌に馴染んだのか、以降はこ…

C V L T S『Intentions』(Beer On The Rug)

ジャケットが本当に意味不明なレーベル主催の新作。音楽性に大きな変化はなく、ギターとキーボードを中心にゆらゆらと進行していく。A面はシンセとギターが生み出す蜃気楼のようなぼやけた空気の中を、やがて4/4の朴訥なビートがゆっくりと歩みだす。ムード…

Torn Hawk『Fist』(Beer On The Rug)

こちらも多作な映像作家兼アーティストのLuke Wyattによる作品で、クラウトロック+インダストリアルなサウンドで退廃的な世界観を提示する。本作の少し前にリリースされた『10 For Edge Tek』に直接通じる音楽性だが、トリップを目的の一つとしていたそちら…

Headboggle & Vibrating Garbage『S/T』(Beer On The Rug)

Spectrum Spoolsからもリリースする非常に多作なHeadboggleと、負けじと多作なGreg Gorlen(名義も無数にある)のタッグによる破壊的なテクノ。Gregのアパートでのセッションを元に作られている。同じSpectrum~から作品を出しているContainerに通じるような…

PrismCorp Virtual Enterprises『ClearSkies™ & Home™』(Beer On The Rug)

VektroidのBOTRからの最終作で、二枚同時にリリースされた。テーマは往年のMIDI音源。『ClearSkies™』にはヤマハ謹製のMIDI音源が、『Home™』ではそれに加えてGeoCitiesやRolandのMIDI音源に、既存のポップスのMIDIカバーが収録されている。ヤマハの楽曲はキ…

Digital Natives『It's All Point Blank』(Beer On The Rug)

Housecraft Recordingsの主催でもある非常に多作なアーティスト(2012年にこの名義だけでも10作以上リリースしている)Jeffry Astinによる作品。企業のCMのようなポップでキャッチーなループを、変調させたりノイズを被せたりして不気味に加工したもの。商業…

Mind Dynamics『Precision Instruments』(1080p)

(プレスリリース翻訳) "器":統一された、集団的な行動と意識。自己の喪失、ケーブル、ミキサー、機械を交差する流れの交換、純粋な活力の節目から現れる一つの精神。" Daniel FreshwaterとBrian Whatevererによるライフスタイルを重視するブルックリン出…

Perfume Advert『Tulpa』(1080p)

(プレスリリース翻訳) イギリスはミドルズボローのデュオ、Perfume Advert (Aaron Turner とTom Brown) は、深く這うようなテクノの抽象性とザラザラした質感、サブリミナルでぼやけたシンセラインを組み合わせ、地平線上の蜃気楼のように漂って消えていく…

Young Braised『Japanese Tendencies』(1080p)

(プレスリリース翻訳) ラップゲームの現時点では、バンクーバーを拠点とするラッパー、Young Braisedの始まりがありえないものであるかどうかは判断しがたい。Jaymes Bowman(IRLで知られている)は最初、キリスト教の家庭で育った後、P.O.Dのように時々ラ…

Bobby Draino & Xophie Xweetland『Chrome Split』(1080p)

(作品が流通していないため、ネットで聴ける2曲のみを聴いた状態での感想となっています)ファットでビビッドな音色の朗らかなテクノ/ハウス。レーベルのここまでのリリースの中では間違いなく一番メロディアスかつキャッチーで、ネットに残る各メディアの…

Abstract Mutation『Fake Keygen』(1080p)

James Grantなる人物の、この名義での唯一作。特定のジャンルによらない、名義の通りアブストラクトな電子音楽。その音楽性の謎さ・匿名性により、自分の中の1080pのイメージと合致する。リリースが初期ということもあり、どちらかというとレーベルのイメー…

M/M『Midtown Direct』(1080p)

(プレスリリース翻訳) ブルックリンのプロデューサーMichael McGregorのM/Mプロジェクトは、Meadowlands名義で発表した超クリアでミニマルなドローンから遠く離れ、抽象的で質感にこだわったクラブミュージックを追究する。『Midtown Direct』は、濁った功…

Tings & Savage『Brain Foam』(1080p)

(プレスリリース翻訳) メルボルン在住のレトロハウスプロデューサーRoland Tingsと共謀者Nathan Savageによるクラブメイトとウィードにまみれたコラボレーション作品。ベルリンの運河沿いのスクラップ置き場に隣接する古い行政機関の建物を改造した施設に…

Heartbeat(s)『Home Remedies』(1080p)

(プレスリリース翻訳) LOL Boysの片割れ、Markus GarciaのHeartbeat(s)名義でのデビュー作。アバンギャルドなテクノとゲットーなベースが50%ずつ入った『Home Remedies』は、シカゴで過ごした少年時代とDance ManiaやTraxxなどのレーベルから影響を受けて…

青葉市子『0』(Speedstar Records)

日本のSSWによるメジャーデビュー作となる4th。クラシックギターによる弾き語りで、シンプルなスタイルゆえに表現力の高さやソングライティングの良さが引き立つ。凛とした透き通った声は部屋の空気も聴き手の精神もシャキッとさせるようだ。七尾旅人の3rdの…

Various『THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS+ GRE@TEST BEST!』(日本コロムビア)

今や巨大コンテンツへと成長した「THE IDOLM@STER」シリーズの、ゲーム・アニメから代表曲を網羅・収録したベストアルバムシリーズ。計4作出ており、それぞれ「SWEET&SMILE!」などのコンセプトに沿って楽曲がまとめられている。音楽性は多岐にわたるためこ…

Various『The Early Emissions』(EPs 1-4)』(Firecracker Recordings)

スコットランドのエジンバラ発のレーベルによる、2004~2009年に発表された初期EPをまとめたコンピレーション。デトロイトに通じる「黒さ」を持ったビートダウン・ハウス。ディスコやジャズ、ソウルなどのブラック・ミュージックを広く取り込んだ、豊かな音…

Various『Livity Sound』(Livity Sound)

Peverelist、Kowton、Asusuによって運営されているブリストルのレーベル「Livity Sound」の、2011~2013年に発表された楽曲をまとめたコンピレーション。シンプルで力強いテクノで、音数はミニマルと呼べるほどに絞られているが代わりに一音一音が迫力を持っ…

Vampire Weekend『Modern Vampires of the City』(XL Recordings)

ニューヨーク出身のバンドの3rd。テンポはスローに、音域は中低域に、音色はシックで落ち着いたものにそれぞれ変化し、今までで一番穏やかに聴かせる作品となった。それまでも室内楽的な、いわゆるチェンバー・ポップな楽曲はあったが、「Step」を筆頭に今作…

Stellar OM Source『Joy One Mile』(Rvng Intl.)

アナログ・シンセによるニューエイジ~アンビエントな作品を発表していた女性アーティスト、Christelle Gualdiによる2013年作。高密度でエクストリームなテクノ。細かい音が集まってメロディーラインが生み出されていく様子は点描的とも言える。一音一音ベロ…

RP Boo『Legacy』(Planet Mu)

ジューク/フットワークというジャンルのオリジネイターの一人と目されるシカゴ出身のプロデューサーの1st。リズムに特化したジャンルの中でも特にリズムに凝った作品で、聴くとリズムには進化する余地がまだこんなにあったのか、と驚かされる。最先端のダン…

Oneohtrix Point Never『R Plus Seven』(Warp)

レーベル移籍後の6th。ソフト・シンセによる人工的でハイファイな音色が特徴的なエレクトロニック・ミュージック。滑らかなサウンドとしばしば顔を出す教会音楽風のハーモニーが美しいイメージを作り出す。メロディーはあるがポップ・ソング的な繰り返しはな…

My Bloody Valentine『m b v』(MBV Records)

アイルランド出身のバンドによる22年(!)ぶりの新作。基本的な音楽性は変わっていないが、そもそも前作『Loveless』と同レベルの楽曲・サウンドを再び作れたこと自体が偉業である。アナログな手法にこだわって作られたサウンドは「マイブラ節」としか言い…

Maxo『LEVEL MUSIC PURCHASE』(self-released)

アーティストがニューヨーク州立大学パーチェス校に在籍中に手掛けた作品で、同校のキャンパスがもしゲームだったら…という設定で作られており、各楽曲はキャンパス内の場所(と時間)に対応している。リズムとコード進行に凝った楽曲は高密度で機能的。スー…

Logos『Cold Mission』(Keysound)

イギリスのプロデューサーのデビューアルバム。無音部分を大胆に配置することでリズムを最大限に強調したグライム。Jam Cityの11年作におけるグライムの骨格だけを抜き出したようなサウンドに、無重力空間を連想させる冷たいアンビエンスと無音を加えさらに…

Lil Ugly Mane『Three Sided Tape [Volumes One]』(self-released)

多くの名義を使い大量の作品を発表しているTravis Millerの、Lil Ugly Mane名義による未発表曲やインストゥルメンタルをまとめたミックステープ。様々なタイプの楽曲が無造作に(ぶつ切りで)繋がれていくさまは分裂症的な不気味さがあるが、困ったことにど…

KMFH『The Boat Party』(Wild Oats)

デトロイト出身のDJ/プロデューサーのデビュー作。リズムを前面に押し出したラフな音色のマシン・ファンク。メロディーやコードといったものはほとんどなく、代わりにリズムと、目の前でツマミを回しているかのような生々しいエフェクト操作で展開を作ってい…

Jon Hopkins『Immunity』(domino)

Brian Enoとの関わりの深いプロデューサーによる4th。アンビエントに通じる空間的な音響とクリック/グリッチ通過後の緻密な打ち込みが自然に融合したスケールの大きなテクノ。アルバムは前半が猛烈で雄大なテクノ、後半が夜空を揺蕩うようなアンビエントと明…

Jessy Lanza『Pull My Hair Back』(Hyperdub)

カナダ出身のSSWによるデビュー作。セクシーさと神秘性をあわせ持つボーカルが魅力的なR&B。同郷であるJunior BoysのJeremy Greenspanがプロデューサーとして製作に参加しており、サウンドもそれに連なるミニマルで滑らかなものになっている。終盤3曲の内省…