2001

The White Stripes『White Blood Cells』(Sympathy for the record industry)

アメリカのデュオによる3rd。「ロックンロール」とされる音楽の、最大公約数的なサウンド・楽曲をストレートに捉えて形にした作品。革新性やユニークさはないのだが、そのシンプルで原始的な有り様がガレージロック・リバイバルという大きな流れを巻き起こし…

Tim Hecker『Haunt Me, Haunt Me Do It Again』(Substractif)

バンクーバー出身のアーティストの本名名義での1st。重厚なドローンを主体にグリッチの要素を取り入れたアンビエント。Stars of the LidとFenneszの同年作の中間のようなサウンドで、革新的なところはないのだが非常に完成度が高い。楽曲を掴みやすくするた…

Super Furry Animals『Rings Around the World』(Epic)

ウェールズ出身のバンドの5作目で、メジャーデビュー作。多様なジャンルのサウンドを取り入れつつも、最終的には世界的な射程距離を持つポップスとして出力されるところはBlur『13』に近いものがある。BlurやOasisなどのブリットポップ勢に通じるポップセン…

The Strokes『Is This It』(RCA)

ニューヨークのバンドのデビューアルバム。シンプルで勢いのあるギターロック。WireのミニマルなポストパンクとTelevisionの各楽器が有機的に絡み合うギターロックを組み合わせたようなスタイルで、『White Blood Cells』同様、当時の音楽シーンにガレージロ…

Stereolab『Sound-Dust』(Duophonic)

イギリスとフランスを出自に持つバンドの7作目。故Mary Hansenの参加した最後のアルバムはクラウトロックの「反復の美学」を胸に抱いたループ主体のスタイルから離れ、より歌やメロディーにフォーカスした内容になった。ループのくびきから解放された楽曲は…

Stars of the Lid『The Tired Sounds of...』(Kranky)

テキサス州オースティンで結成されたデュオの6作目。ギターのフィードバックにストリングスやホーンを加えた重厚なドローン・アンビエント。繰り返しを基調とするキャッチーな構造はほぼないが、音色の繊細でゆっくりとした変化が聴き手の意識を掴んで離さな…

Rufus Wainwright『Poses』(DreamWorks)

アメリカのSSWの2nd。豊かなテノールをフィーチャーしたチェンバーポップ。オペラに影響を受けた、ドラマチックながらもゆったり・ふっくらとした楽曲は伸びやかなボーカルと相性バツグンだ。音楽一家の人脈もあって多彩なゲストが参加しており、作品の音楽…

Radiohead『Amnesiac』(Capitol)

イギリスのバンドの5thで、前作『Kid A』と同時期に録音されている。前作にはあった流れの良さ・アルバムとしてのまとまりが失われている点でポップさという観点から見ると劣るのだが、代わりにサウンド・楽曲のユニークさは際立っており、「他に似たような…

The Other People Place『Lifestyles of the Laptop Café』(Warp)

アメリカのプロデューサーJames Stinson(Drexciyaのメンバーとして知られる)のソロアルバム。幻想的な雰囲気の、メロディアスなデトロイトテクノ~エレクトロ。ややゆっくり目のテンポと、森林や海中に差し込む光のように揺らめくウワモノが親密さを演出す…

The Microphones『The Glow, Pt. 2』(K)

Phil Elverumを中心とするアメリカのバンドの3rd。ブラックメタルや実験的なアンビエントを横断する不安定なフォーク~ロック。個人的な感想を率直に述べると「中途半端でたまに冗長」というネガティブなものになるのだが、本作の生々しく気まぐれなサウンド…

Matthew Herbert『Bodily Functions』(IK7)

イギリスのアーティストの3作目のアルバム。“PCCOM”という、主にサンプリングについて扱ったマニフェストに基づいて製作されたジャジーで上品なディープハウス。“身体機能”というタイトルの通り、人体をソースとしたサウンドを素材としており、実際にそこか…

Matt Marque『Get There』(Truckstop)

シカゴのSSWのデビューアルバム。Elliott Smithを想起させる線の細いファルセットで歌われる、ミニマルで朴訥としたフォーク。現WilcoのGlenn Kotcheなどの参加した本作はStephen PrinaやLoose Furの作品のような、シカゴ周辺のアーティストの人脈の豊かさか…

Matmos『A Chance to Cut Is a Chance to Cure』(Matador)

アメリカのデュオの4作目。ジャケットやアルバムタイトルが物語るように、主に外科手術の音を素材として用いた実験的なテクノ。出所は不穏だが最終的なアウトプットはポップかつユーモラス。音の由来や曲のコンセプトなどの背景を何も知らずに聴いても楽しめ…

Low『Things We Lost in the Fire』(Kranky)

ミネソタ出身のバンドの5th。厳かで神聖な雰囲気のドリームポップ/スロウコア。ゆっくりなテンポとミニマルなアレンジ・シンプルなソングライティングが、バンドが放つ一音一音を、そしてAlanとMimiによる美しいボーカルハーモニーを極限まで引き立たせる。…

Life Without Buildings『Any Other City』(Tugboat)

グラスゴー芸術大学の元学生らによるバンドの1stにして唯一作。Don Caballeroに影響を受けたという、確かな演奏力の小気味いいバンドサウンドの上でSue Tompkinsのボーカルが跳ね回る。最も特徴的なのがこのTompkinsによるスキャットとおしゃべりの中間のよ…

Jon Hopkins『Opalescent』(Just Music/absolute zero)

イギリスのアーティストのデビュー作。浮遊感のあるアンビエント。透き通った空気感のキラキラしたサウンドで、聴いているとまるで自分が星空のただ中に浮かんでいるかのような感覚を覚える。サウンドの滑らかな移り変わりにはサウンドデザインの優れたセン…

Jim O’Rourke『Insignificance』(Drag City)

シカゴのアーティストの、Drag Cityからの3枚目のアルバム。前作に続く“うたもの”のアルバムは、彼のロックンロールな側面を反映した作品となった。前作にあった音響のマジックはここにはないが、代わりに親しみやすいソングライティングがあり、それは風通…

Jim O'Rourke『I'm Happy and I'm Singing and a 1, 2, 3, 4』(Mego)

Jim O'Rourkeがウィーンの実験的なレーベルからリリースした作品。1997年~1999年にかけて行われた、ラップトップ(ノートパソコン)を用いたライブパフォーマンスを収録したもの。電子音をメインに様々なサンプリングを繋ぎ合わせたサウンド。作曲と即興の…

JAY-Z『The Blueprint』(Def Jam/Roc-a-fella)

アメリカのラッパーの6枚目のアルバム。ソウルフルなサンプリングを活かしたキャッチーなトラックが光るヒップホップ。著作権に関わる法的・金銭的な問題を回避するため、メジャーなフィールドで避けられていたサンプリングという手法を大々的に取り入れてお…

Jan Jelinek『Loop-Finding-Jazz-Records』(~SCAPE)

ドイツ出身のアーティストの2枚目のアルバム(本名名義では1枚目)。1960年代~70年代のジャズのレコードからサンプリングした音素材を中心に構成されたクリックハウス。由来がわからなくなるほどに細かく刻まれたサウンドは、ミクロで見れば生理的に気持ち…

Fugazi『The Argument』(Dischord)

ワシントンD.C.出身のバンドの6作目で、現時点での最終作。ポップに洗練されたハードコア。硬質なサウンド・運動神経の良いエモーショナルなパフォーマンスはそのままに、楽曲は今までにない充実を見せる。#2「Cashout」を筆頭にアルバムの前半はよりメロデ…

Four Tet『Pause』(Domino)

バンドFridgeのフロントマンでもあるKieran Hebdenのソロ名義の2nd。エレクトリックな音とアコースティックな音をヒップホップ由来のビートの上で混ぜ合わせたサウンドで、“フォークトロニカ”というジャンルの代表作とされる。おもちゃ箱をひっくり返したよ…

Fennesz『Endless Summer』(Mego)

オーストリアのアーティストの3枚目のアルバム。ギターの演奏とグリッチの手法を組み合わせたアンビエント。メロディーもコードもノイズまみれ、かつクリックによる細かな穴だらけであり、そのことは一般的には良くないこととされているのだが、本作において…

Daft Punk『Discovery』(Virgin)

フランスのデュオの2nd。ハウスをベースにディスコやR&Bを取り込んだノスタルジックなダンスミュージック。やや武骨な印象のあった前作に比べ歌やメロディーといった要素が比重を増し、よりキャッチーでフレンドリーになっている。ロボットをイメージさせる…

Cannibal Ox『The Cold Vein』(Definitive Jux)

ニューヨークのハーレム出身のデュオの1st。El-Pによるスペーシーなトラック・痙攣しているようなビートにハードコアなラップが乗る。残念ながらラップを楽しめるだけの耳も教養もないのだが、それでも楽しめるのは本作のトラックのレベルが異様に高いからで…

Björk『Vespertine』(Elektra)

アイスランドのアーティストの4th。キメの細かなエレクトロニクスと壮麗なストリングスが同居したアートポップ。MatmosやHerbertなど多くのアーティストがプログラミングとして参加し、グリッチの流行を通過したミクロなビートを提供している(#2「Cocoon」…

Autechre『Confield』(Warp)

イギリスのデュオの6作目。Max/MSPという、様々なアートに使われている統合開発環境/プログラミング言語を用いて製作された実験的な電子音楽。音楽はプログラムされた規則に従いリアルタイムで変化していく。この先進的な製作手法を象徴するものとしてオープ…