2017

Orthodontrix『scarcity』(Beer On The Rug)

約一年ぶりの二作目。曲名はすべて「i」という一人称から始まる文で統一されており、音楽性と合わせて抽象的なストーリーを感じさせる。サウンドは変わらずマッシブな質感のエレクトロニカ、あるいはスタジアム向けEDMといった感じ。前作にはなかったインタ…

Traxus『Martian Ayre』(Beer On The Rug)

どこか寂しさを感じさせるドット調のアートワークが印象的。サイバーパンクというタグや曲名などからなんとなくSFな世界観が浮かぶ。内容はゲーム音楽っぽい機能的なシンセポップで、中盤ではモロにチップチューンなスタイルも現れる。#7~#9は特にゲーム音…

Duncan Malashock『Interiors, Vol. 1』(Beer On The Rug)

ニューヨークのソフトウェアエンジニア兼ミュージシャンの作品。2~3分の人懐っこいシンセポップが4曲入ったEPサイズ。少し懐かしい感じのするキラキラしたシンセの音色と親密なメロディーは相性がいい。リズム的に入り組んだところもなく、どこまでもメロデ…

VRTUA『Loud Formations』(Beer On The Rug)

SEGAのメガドライブ(ジェネシス)に搭載されているFM音源をエミュレートしたビビッドな音色が特徴のエレクトロニカ。サウンドはもちろん楽曲もゲーム音楽に影響を受けた機能的なもので、ゲーム音楽のファンは抗えない音楽だろう。#2「Theia」では(おそらく…

AL-90 / Dx2ov『Rare Tpax』(Beer On The Rug)

ロシアのアーティスト二人のスプリット作品で、AL-90の7曲の後にDx2ovによる8曲が続けて収録されている。どこかくぐもった音の響きとアングラな雰囲気を共通要素として、AL-90は硬派な、Dx2ovはフリーキーなテクノを披露。おもしろいのは後者で、サンプリン…

mmph『Dear God (Remix EP)』(Beer On The Rug)

mmphによるBOTR055のリミックス盤。『Remix Playground』が一つの曲のみを(複数アーティストで)リミックスしたのに対し、こちらは元EPのすべての曲をリミックスしている。尺も元からあまり変わらず、まさに別バージョンといった塩梅。参加しているメンツ(…

Rhucle『Wonderland』(Beer On The Rug)

東京ベースの多作な日本人アーティストのBOTRデビュー。風に揺れるカーテンのようなシンセに自然の環境音が大きくフィーチャーされるビートレスなニューエイジ。全編通してスタイルは変わらないのでよくも悪くも金太郎飴的。シンセサウンドの展開の仕方にはS…

Aphni『Tabrecn』(Beer On The Rug)

カナダのカルガリーを拠点にしていることくらいしか情報がない。おそらくデビュー作となるEPサイズの作品。神経質なダウンテンポ~アンビエントを4曲収録。霞がかったアンビエンスや往年のIDMっぽい音色などから、個人的にはSkee Maskを連想する(偶然かもし…

CTN.『Algorithmic Love』(Beer On The Rug)

涼しげなジャケットが印象的なドイツのアーティストの作品。浮遊感のあるコードを軸に展開するアシッドハウスで、4曲20分弱のEPサイズ。アナログシンセサイザーの強みである、自在に変調する電子音を堪能できる。サウンドはもちろんだがコードの印象も4曲で…

Suryummy『Genesis Clarity』『Photon Slobber』(Beer On The Rug)

音楽性が似通っているため2017年の次作も一緒に取り上げる。サンフランシスコのデザイナー・アニメーター・ミュージシャン…多才なアーティストのEmmett Feldman。Graham Kartnaと同じく映像分野でも活躍しており、2021年のデモリール*1によればプロジェクシ…

VRTUA『LOUD FORMATIONS』(Beer On The Rug)

アメリカはデンバーを拠点に活動するBobby Spiecherのソロ・ユニットによるデビュー作。セガのメガドライブの音源を使用したビビッドなサウンドが特徴の機能的なエレクトロニカ。序盤の数曲では昔のゲームにおけるバグ的な現象が音で表現されており耳を引く…

Visible Cloaks『Reassemblage』(Rvng Intl.)

ポートランドのデュオによる2nd。音色はOPN『R Plus Seven』、James Ferraro『Far Side Virtual』に通じる人工的で潔癖なもので、楽曲も『R Plus~』に近い抽象的なものなのだが、こちらはよりオリエンタルな空気がある。メンバーのSpencer Doranはかつて『F…

Tyler, The Creator『Scum Fuck Flower Boy』(Columbia)

OFWGKTAの首魁による4th。内省的なトーンでまとめられたヒップホップ。アルバムのリード・シングルとなった「911 / Mr. Lonely」が象徴するように「孤独」がテーマの一つで、全編にメロウなムードが漂っている。個人的にはどこか寂し気な曲調で退屈について…

Toiret Status『Nyoi Plunger』(Noumenal Loom)

日本の山口県在住のIsamu Yorichikaによるユニットの2017年作。エクスペリメンタルで反射神経の良いエレクトロニック・ミュージック。奔放なリズムに乗ってコミカルでキュートな音が連鎖していくさまは、例えるなら「音のピタゴラスイッチ」。予測不可能性が…

Standing On The Corner『RED BURNS』(self-released)

ブルックリンを拠点に活動するジャズ~ヒップホップグループの2nd。約1時間で36曲もの短い曲が流れていくコラージュ的な作品。AメロBメロサビ~といったポップスの形式に囚われない自由で気ままなイメージのアルバムで、雰囲気のある印象的なフレーズが思い…

Machine Girl『.​.​.​BECAUSE IM YOUNG ARROGANT AND HATE EVERYTHING YOU STAND FOR』(Orange Milk)

ニューヨークを拠点とするMatt Stephensonによるプロジェクトの2017年作。異常なテンションのブレイクコア。デジタルなサウンドはDeath Gripsを思わせるが楽曲はあちらよりもテンポが速く、より躁的である。ジャケットからも読み取れるが内容もゲームから影…

Lily Konigsberg & Andrea Schiavelli『Good Time Now』(Ramp Local)

ニューヨークで活動する二人のアーティストの連名名義の作品で、それぞれの手による楽曲が交互に配置されている。Konigsbergの提供曲には彼女の属する別のユニット(Lily and Horn Horse)での相棒であるMatt Normanによってホーンが高らかに響くバロック・…

Lee Gamble『Mnestic Pressure』(Hyperdub)

ロンドンを拠点に活動するDJ/プロデューサーの2017年作。現代的で折衷的なエレクトロニック・ミュージックで、正直あまり言語化できていない。Actressのような掴めなさ・(影響元の多さからくる)闇鍋感があるがあそこまで抽象的ではなく……実際サウンド的に…

King Gizzard And The Lizard Wizard with Mild High Club『Sketches Of Brunswick East』(Flightless)

超ハイペースで活動を続けるオーストラリアのバンドとLAのSSW/マルチ・プレイヤーによる共作。ビンテージな音色がきらめくジャジーなサイケデリック・ロック。まるで70年代にタイムスリップしたかのようなサウンドに驚く。陰影のある複雑な展開を滑らかに、…

Khotin『New Tab』(self-released)

カナダ出身のアーティストの2nd。純粋な音の響きと環境音的な軽やかな音遣いにフォーカスしたアンビエント。作曲の比重は高くなく、ただぼや~っと音が鳴らされているだけとも言えるのだが、それだけでも十分に気持ちいいという音色の作り込みがすばらしい。…

Jonny Nash & Suzanne Kraft『Passive Aggressive』(Melody As Truth)

オランダを拠点として活動する二人のアーティストのコラボ作。柔らかな音色がゆっくりと漂うアンビエント。牧歌的な音色のシンセやピアノ、ウッドベースがゆったりと空間を埋めていく。全体の空気感・時間間隔は『Music For Airports』と地続きの王道なもの…

Fleet Foxes『Crack-Up』(Nonesuch)

シアトルを拠点に活動するバンドの3rd。厳かな響きのあるフォーク・ロック。静と動を自在に行き来するダイナミックな楽曲はGrizzly Bear『Veckatimest』を彷彿とさせる。全体的にシリアスなムードの中でボーカルのメロディーの朗らかさ・ハーモニーの美しさ…

DeepChord Presents Echospace『live in detroit [ghost in the sound]』(echospace [detroit])

Rod ModellとStephen Hitchellによるユニットの10周年を記念したリリースで、2013年にデトロイトで行われたライブセットをリマスタリングしたもの。ダブ・テクノ自体とても硬派な音楽ジャンルだが、本作ではライブならではの展開の妙やダイナミズムといった…

Cornelius『Mellow Waves』(Warner Music Japan)

東京出身のアーティストの約10年ぶりの6th。タイトルの通りメロウな空気の歌ものアルバム。クリアで緻密な立体音響は健在で、オープニングの「あなたがいるなら」から遺憾なく発揮されている。実験的な面は控えめな一方、いつになくSSWとして・ギタリストと…