00年代スタンダード編

The XX『XX』(Young Turks)

イギリスのバンドのデビュー作。ポストパンクのソリッドでミニマルなアンサンブルとドリームポップ~R&Bのスウィートな楽曲を組み合わせたクールでセクシーなポップ。Young Marble Giantsに通じる引き算の美学を感じさせるサウンドはシンプル故にキャッチー…

Various Artists『Dark Was The Night』(4AD)

エイズ撲滅を目的とする非営利の国際機関Red Hot Organizationによるコンピレーション。プロデュースをThe NationalのDessner兄弟が務め、結果、00年代のUSインディー見本市とでも呼べるようなラインナップとなった。楽曲はどれも充実しており、それぞれのア…

Sunset Rubdown『Dragonslayer』(Jagjaguwar)

Wolf ParadeやFrog Eyesなど多数のバンドで活発に活動していたSpencer Krugを中心とするバンドの4作目にして最終作。”竜殺し”なるタイトルが印象的な勇猛でドラマチックなロック。過剰に複雑で長大だった前作と比べてよりポップに洗練された楽曲が特徴だ。正…

Real Estate『Real Estate』(Woodsist)

アメリカのバンドのデビュー作。日に焼けて色褪せたサウンドで奏でられる穏やかなギターポップ。リヴァーブのかけられた柔らかなギターを中心としたアンサンブルにはいつまでも聴いていたくなるような心地よさがある。作品の一番の魅力は楽曲とサウンドが総…

Passion Pit『Manners』(Frenchkiss)

アメリカのバンドのデビュー作。エモーショナルでエネルギッシュなエレポップ。高音のボーカルは生き生きとした感情の塊としての子どもを連想させる。楽曲は思わず一緒に歌いたくなってしまう魅力的なフックにあふれている。#2「Little Secrets」はイントロ…

Oneohtrix Point Never『Rifts』(No Fun Productions)

アメリカのアーティストの、1st~3rdを含む、キャリア初期の音源をまとめたコンピレーション。幻想的でイマジネイティブなアンビエント~ニューエイジ。ほぼシンセサイザーとアルペジエーターのみを用いて作られた音楽にはストイック…というか無垢な響きがあ…

Neon Indian『Psychic Chasms』(Lefse)

Alan Palomoを中心とするアメリカのバンドのデビュー作。ローファイに加工されたサウンドが特徴の、サイケデリックなエレポップ。アルバム冒頭を飾る「Deadbeat Summer」や「Terminally Chill」で聴ける調子っぱずれなシンセはJerry Paperなんかを彷彿とさせ…

Motor City Drum Ensemble『Raw Cuts Vol.1』(Timothy Really)

ドイツのDJ/プロデューサーの、「Raw Cuts」と題された12インチシングル群をまとめ、さらに新曲とJayson Brothers名義の曲を加えたコンピレーション。昔のソウルやファンクのサンプリングをベースにした骨太なディスコ~ハウス。MoodymannやTheo Parrishに通…

Luciano『Tribute To The Sun』(Cadenza)

ヨーロッパとチリを股に掛けるDJ/プロデューサーの2nd。Ricardo Villalobosに通じる細かなグルーヴのミニマルテクノをベースに民族音楽的なサウンドを加えたもの。女声のボイスサンプルが乱舞する躍動的で忙しない1曲目を乗り越えると、より軽やかでリラック…

Leyland Kirby『Sadly, The Future Is No Longer What It Was』(History Always Favours The Winners)

イギリスのアーティストの本名名義での1st。ピアノを中心とした幽玄で抒情的なアンビエント。サンプリングを主体としていたThe Caretaker名義とは異なり、全編に渡って本人の演奏をフィーチャーしている。CD3枚組の巨大な作品だが、音楽性には統一感があり、…

Grizzly Bear『Veckatimest』(Warp)

アメリカのバンドの3rd。『Friend EP』で見せたオーケストラにも匹敵する特大スケールのサウンドと、より緻密に構成されたドラマチックな楽曲を両立させた強力な作品。クラシックの影響やフォークなどのトラディショナルなルーツも感じるサウンドは、敢えて…

Girls『Album』(True Panther)

抽象的な名前が印象的な、アメリカの二人組バンドのデビュー作。(今って何年だっけ?)と思わず確認してしまうような、懐かしい空気のサウンドとソングライティングが特徴。Elvis Costelloや初期のThe Beach Boysを彷彿とさせるストレートなポップ/ロックだ…

Fever Ray『Fever Ray』(Rabid)

The Knifeのメンバーのソロデビュー作。ひんやりとした音の質感は本家譲りだが、楽曲には明確な違いがある。ひとつはメロディー主導で展開すること。中心となるボーカルと、それを伴奏として取り巻くエレクトロニクスという構図はSSW的と言ってもいい。もう…

Drake『So Far Gone』(October's Very Own)

カナダのアーティストの3作目のミックステープ。Kanye West『808s & Heartbreak』の流れを継ぐ、内省的なサウンドのヒップホップ/R&B。もこもことしたキーボードによる篭った感じのアンビエンスが作品全体を包み込んでいる。粗暴で剣呑な雰囲気はなく、上品…

DJ Sprinkles『Midtown 120 Blues』(Mule Musiq)

90年代からコンセプチュアルな作品を発表し続けていたアーティストのDJ Sprinkles名義での1st。緻密にレイヤーの重ねられた、繊細で包容力のあるディープハウス。慈愛に満ちた音楽には英語の語りという形で直接的にメッセージが込められている。それは音楽の…

Dirty Projectors『Bitte Orca』(Domino)

アメリカのバンドの5th。エクスペリメンタルながら軽やかでもある奇妙なロック。優男風(?)のボーカルに華やかな女声のコーラス、高らかに掻き鳴らされるギターと、聴き当たりは爽やかなのだが、楽曲やアレンジは他に類を見ないほどに複雑だ。だからといっ…

Dam-Funk『Toeachizown』(Stones Throw)

アメリカのアーティストのデビュー作。ビンテージなサウンドが煌めく、巨大なマシンファンクのコレクション(元は5LPのシリーズもので、CD版は少し曲が省かれている)。様々なスタイルの楽曲に共通するのは宇宙的な響きのコードであり、本作を聴いているとこ…

Bill Callahan『Sometimes I Wish We Were An Eagle』(Drag City)

アメリカのSSWの、本人名義での二作目。暖かく穏やかなフォークロック。本作の特徴はアルバム全体を覆う、柔らかいホーン・ストリングスのアレンジで、作品にこれまでにない親密さを加えている。Smog名義の作品と同様、時おりダークな曲が顔を出すのだが、今…

Bibio『Ambivalence Avenue』(Warp)

イギリスのアーティストの4作目で、Warpからのデビュー作。それまでの作品のトレードマークであった、Boards of Canada(特に3rd)の影響色濃いサイケデリックで儚げな、ひび割れたギターサウンドはそのままに、Flying LotusやPrefuse 73に通じるインスト・…

Atlas Sound『Logos』(4AD/Kranky)

アメリカのバンドDeerhunterのフロントマンのソロ2nd。バンドのゴーストリーな音響はそのままに親密さを増したベッドルームポップ。ヴェルヴェッツに通じるセンスでギターをベースに作られた楽曲はシンプルで即効性がある。アルバムにはAnimal CollectiveのP…

Animal Collective『Merriweather Post Pavilion』(Domino)

アメリカのバンドの8作目。妖精のような音楽を奏でていたバンドは2005年の『Feels』から次第にその音楽を「型枠」に嵌めるようになったが、その型枠を作る技術も作を追うごとに向上し、そしてひとつの頂点に達したのが本作だ。つまりソングライティングやア…

Zomby『Where Were U In '92?』(Werk Discs)

イギリスのプロデューサーのデビュー作。サイケデリックなボイスサンプル・けたたましいクラクションが入り乱れる、ダークで猥雑なジャングル~ダブステップ。タイトルが象徴するように90年代のレイヴをテーマに据えた作品(不便を承知で当時の機材を使うほ…

Vampire Weekend『Vampire Weekend』(XL)

ニューヨークのバンドのデビュー作。アフロポップとチェンバーポップの明るく楽しいハイブリッド。華やかな管弦にキュートな音色のシンセを組み合わせたサウンドは軽やかでファニー。バンドの演奏は小気味よく、フィジカルな快感にあふれている。楽曲からは…

Times New Viking『Rip It Off』(Matador)

アメリカのバンドの3rd。Lightning Boltばりの騒音が特徴のノイズポップ。“ローファイの美学”と呼ぶには乱雑すぎるサウンドで、普通に聴くとうるさすぎるのでボリュームを下げて聴くことになる(野外ライブをずっと遠くから聴いているような感じになる)。楽…

Theo Parrish『Sound Sculptures Volume 1』(Sound Signature)

デトロイトを拠点として活動するDJ/プロデューサーの3rdで、CD版は前年にアナログ3枚組でリリースされたものの拡張版と言える。ラフな質感のシカゴハウスをベースにジャズやソウル、ファンクやヒップホップなどを吞み込んだもの。しかしアブストラクトなとこ…

Portishead『Third』(Island)

イギリスのバンドの11年ぶり3作目。ダークな雰囲気のエクスペリメンタルなロック。不協和音、非同期なリズム、ぶつ切りにされたサンプリング、耳障りなエレクトロニクスなど、乱雑で攻撃的な音楽性を持つ。それは聴き手に寄り添った、整った音楽に触れてきた…

Ponytail『Ice Cream Spiritual』(We Are Free)

アメリカのバンドの2nd。高速で暴れまわるバンドサウンドが気持ちいいエクストリームなロック。もともとのテンポが速いのに加えて16分32分が普通に出てくるため演奏は半ば痙攣のようになっているのだが、それがまた良いんですよね(個人的なフェチ)。バンド…

No Age『Nouns』(Sub Pop)

アメリカのギターとドラムのデュオの2nd。Lightning Boltのような編成で、ローファイで迫力のある録音と勢いのある演奏と、音楽性にも似たところがあるが、こちらはより単純明快なパンクを展開している。それもとびきりにポップで洗練されたパンクだ。ボーカ…

Move D & Benjamin Brunn『Songs from the Beehive』(Smallville)

ドイツのプロデューサー二人のタッグによる2作目。ダブテクノとアンビエントの中間を突くディープなハウス。Resident Advisorが「Arthropod-house(節足動物ハウス)」と形容したのも頷ける、まるで生きているかのように緩く変化し続けるトラックが特徴で、…

Lone『Lemurian』(Dealmaker)

イギリスのプロデューサーの2nd。崩壊しかけのブレイクビーツに蜃気楼のようにぼやけた電子音が乗る。彼にとってのヒーローであるBoards of Canadaからの影響が色濃い作品で、その音楽性は率直に言えば「Dayvan Cowboy」で見せた明るく爽やかな方向性を推し…