2005

Vashti Bunyan『Lookaftering』(FatCat)

イギリスの伝説的なSSWによる35年ぶりとなる2ndアルバム。穏やかで美しいフォーク。Max Richterによるプロダクションは繊細で慎みがあり、Bunyanの儚げな歌声を引き立てている。本作にはDevendra BanhartやJoanna Newsomをはじめとする、彼女の音楽に影響を…

Galaxy 2 Galaxy『A Hitech Jazz Compilation』(Submerge)

“Mad" Mike Banksを中心とするUnderground Resistanceとその別名義のユニットの楽曲をまとめた二枚組コンピレーション。収録曲のほとんどが90年代に発表されたものだが、①まとまった量の(さらに言えばCDの)リリースが貴重なジャンルであり、このタイミング…

Sunn 0)))『Black One』(Southern Lord)

アメリカの実験的なバンドの5th。通常より低くチューニングされたギターによる特大のディストーションサウンドを中心に据えたドゥームメタル~ドローン。メロディーやリズムといったものはほぼ無く、ただ引き延ばされた音の運動だけが存在している(#2「It T…

Sufjan Stevens『Illinois』(Asthmatic Kitty)

アメリカのSSWの5作目で、2003年の『Michigan』に続きイリノイ州をテーマとしている。フォークからポップへ華麗な転身を遂げた飛躍作。複数のフレーズを有機的に組み合わせるアレンジの手腕はここで最高の冴えを見せている。多くの曲がポップに振り切れる一…

Stephen Malkmus『Face The Truth』(Matador)

元Pavementのフロントマンのソロ3作目。挑戦的なタイトルが示すようにフレッシュで勢いのある快作。1曲目「Pencil Rot」の攻撃的なイントロからかましていく本作は、サウンドこそローファイだが、楽曲やプレイにへろへろとしたところが微塵もないのだ。穏や…

Sleater-Kinney『The Woods』(Sub Pop)

アメリカのバンドのレーベル移籍後初となる7作目。パワフルで獰猛なロック。プロデューサーにDave Fridmannを迎えて作られたサウンドは過去最高に重く分厚く、もはやメタルやシューゲイザーの領域に達している。コブシを効かせて歌い上げるボーカルには今に…

Sam Prekop『Who's Your New Professor』(Thrill Jockey)

シカゴを拠点として活動するアーティストのソロ2nd。穏やかな空気のジャジーなロック。序盤こそアップテンポで活気があるが、本作の真骨頂は中盤以降のフラットで自然な流れだ。湿ったエモーションのあふれる名曲#4「Two Dedications」を過ぎると、以降はど…

Robyn『Robyn』(Konichiwa)

スウェーデンのアーティストの4作目。方向性の違いからJiveレコーズを脱退したRobynは同郷のThe Knifeのインディペンデントな活動姿勢にインスピレーションを受け、自身のKonichiwaレコードを立ち上げる。そしてリリースされたアルバムは自身の名を冠したフ…

The National『Alligator』(Beggars Banquet)

アメリカのバンドの3作目。空間系のエフェクトと有機的に絡み合うバンドアンサンブルという、典型的な特徴を備えたポストパンクではあるのだが、ボーカルを含め中低音でまとめられたサウンドと適度な丸みのある楽器の音色のせいか、どこかジェントルな雰囲気…

The Mountain Goats『The Sunset Tree』(4AD)

John Darnielleを中心とするアメリカの多作なバンドの9作目。ジャングリーなギターと清らかなピアノが印象的な、清涼感のあるフォークロック。ハキハキとしたボーカルも爽やかな印象に拍車をかける。歌の描写の中心となるのは義父から虐待を受けていたDarnie…

Kanye West『Late Registration』(Roc-a-fella)

アメリカのアーティストの2nd。壮麗で豪華なヒップホップ。ソウルフルなサンプリングを特徴とする従来のスタイルに、映画音楽作曲家でもあるJon Brionがプロデューサーとして華やかな管弦を加えている。ポップでドラマチックなトラックを得意するWestとBrion…

Isolée『We Are Monster』(Playhouse)

ドイツのプロデューサーの2nd。様々なスタイルを混ぜ合わせた懐の広いダンスミュージック。ニューウェーブライクなバンドサウンドやエレクトロ、フィルターハウスやシンセポップなど、多彩なスタイルを自在に操る手つきには驚愕を禁じ得ない。結果的に「Isol…

The Drones『Wait Long By the River and the Bodies of Your Enemies Will Float By』(ATP)

オーストラリアのバンドの2nd。Neil Youngの影響を受けたブルージーなガレージロック。ほぼライブ録音であり、バンドの獰猛で破壊的な様子が克明に切り取られている。「Locust」ではエクスペリメンタルで繊細なビルドアップを披露し、バンドの卓越した構成力…

Richie Hawtin『DE9 | Transitions』(M_nus/NovaMute)

カナダのDJ/プロデューサーのDJミックスシリーズの3作目。AbletonやProToolsといったDAWを用いて素材となる複数のトラックを分解し、新たにひとつのトラックとして再構成したものを繋げた作品。ブックレットには使用された楽曲名が膨大な数記されているが、…

Clipse『We Got It 4 Cheap Vol. 2』(Self-released)

Pusha TとNo Maliceの兄弟ユニットClipseにAb-LivaとSandmanが加わったRe-Up Gangよるミックステープシリーズの二作目。(ジャンルに疎いのでこの形式が一般的なのかわからないが)他アーティストのトラック(オリジナルのトラックも少しある)に自身のラッ…

The Clientele『Strange Geometry』(Pointy/Merge)

イギリスのバンドの2nd。流れるようなアルペジオを中心とするフィンガースタイルのギターとリバーブを効かせた柔らかく幻想的なサウンドが特徴のロック~ドリームポップ。基本はバンドサウンドだが要所で艶やかなストリングスが華を添える。浮遊感のあるぼや…

Clap Your Hands Say Yeah『Clap Your Hands Say Yeah』(Self-released)

Alec Ounsworthを中心とするアメリカのバンドのデビュー作。軽やかで楽し気なインディーロック。やや不安定ながらもしっかりとフィジカルに訴えかけるアンサンブルに、おもちゃのようなキラキラした音色のキーボードが色を付ける。へろへろで投げやりなボー…

Bright Eyes『I'm Wide Awake, It's Morning』(Saddle Creek)

Conor Oberstを中心とするアメリカのバンドが2005年に二枚同時にリリースしたアルバムのうちの一つ。牧歌的で穏やかなサウンドのエモーショナルなフォークロック。ボーカルはやや線が細いが内には豊かな感情が溢れており、それは楽曲のところどころで爆発す…

Boards of Canada『The Campfire Headphase』(Warp)

イギリスのデュオの3作目。大胆なギターサウンドの導入と曲構造のポップスへの接近によってより間口が広くなっている。前半のハイライトを飾る#5「Dayvan Cowboy」はきらきらした雄大なシューゲイザーのようなサウンドで、まるでFennesz「Endless Summer」を…

Antony and the Johnsons『I Am a Bird Now』(Secretly Canadian)

Anohni(Antony Hegarty) を中心とするアメリカのバンドの2nd。幽玄で荘厳な響きのチェンバーポップ。ピアノをメインに節度のある管弦が脇を固めたサウンドには厳粛な雰囲気がある。Lou ReedやRufus Wainwrightといった豪華な客演も目を引くが、それら全ての…

Andrew Bird『The Mysterious Production Of Eggs』(Righteous Babe)

アメリカのSSWの通算6作目(バンドBowl of Fire解散後2作目)。彼の得意楽器であるバイオリンを筆頭に伝統的な楽器をふんだんに用いたフォーク/ポップス。楽曲は時にぐねぐねと曲がりくねるが、流れは自然であり、サウンドには優雅さすらある。映画音楽も手…