2007

Various Artists『After Dark』(Italians Do It Better)

アメリカのレーベルItalians Do It Betterの作品を紹介するコンピレーション。直球なレーベル名が示すようにイタロディスコから影響を受けたシンセポップ~ディスコが展開されている。レーベルの共同設立者でありChromaticsとGlass Candyの一員でもあるJohnny…

The Tough Alliance『A New Chance』(Sincerely Yours)

スウェーデンのデュオが2006年に立ち上げた自身のレーベルからリリースした3作目(最終作)。底抜けに明るくエネルギッシュなエレポップ。サウンドはややチープで人工感があるものの、照れや衒いのようなものが微塵もなく、突き抜けた勢いと多幸感がある(「…

Thomas Fehlmann『Honigpumpe』(Kompakt)

ドイツを拠点とし、Palais SchaumburgやThe Orbの一員としても活動していたアーティストのKompaktからの二作目。Joseph Beuysという芸術家へのオマージュ作品で、どこかユーフォリックな響きのあるテックハウス~ダブテクノ。ダブテクノと聞くと単調そう・敷…

Spoon『Ga Ga Ga Ga Ga』(Merge)

アメリカのバンドの6作目。オーセンティックな楽曲とモダンで実験的なプロダクションが互いを高めあうクールなロック。ヴィンテージで生々しい録音をベースに、時おり明らかに加工された音が紛れるサウンドには“異物感”があり、聴き手に強い印象を残す。#3「…

Ricardo Villalobos『Fabric 36』(Fabric)

チリ人DJ/プロデューサーが自身の新曲のみで構成したDJミックス作品。実質的なオリジナルアルバムであり、有名なシリーズを隠れ蓑にする(もしくはフリーライドだ)手法は賛否を呼んだが、こんな暴挙が許されるのも彼が築いた「変人」のレッテルのおかげか。…

Radiohead『In Rainbows』(Self-Released/XL)

イギリスのバンドの7作目。前作でEMIとの契約が切れたバンドが休暇を挟んでじっくりと作り上げたアルバムはかつてなく親密でパーソナルなものとなった。ストレートに抒情的な瞬間が多くあるのが特徴だ。のびのびと実験できた…かどうかはわからないが、作品は…

Pantha Du Prince『This Bliss』(Dial)

ドイツのプロデューサーの2nd。チャイムやマリンバを主体とした点描的なサウンドが特徴のユーフォリックなテクノ。点描的とはサウンドに持続的な部分(サステイン)が少ないということで、例としては雨の音なんかがわかりやすい。様々な定位で丸い音の粒が身…

Of Montreal『Hissing Fauna, Are You the Destroyer?』(Polyvinyl)

Kevin Barnesを中心とするアメリカのバンドの8作目。シンセポップのサウンドとグラムロックのパフォーマンスを組み合わせた、サイケデリックなポップ。60年代のポップスから影響を受けた楽曲はひたすらにキャッチーで馴染みやすいが、妻との不仲や鬱病が影響…

M.I.A.『Kala』(XL)

ロンドンで生まれスリランカで育ったアーティストの2ndで、ビザが取得できなかったためにインドやジャマイカなど様々な場所で録音されている。SwitchをメインにDiploやTimbalandなどのプロデューサーと共に製作された極彩色のポップ(としか形容できない)。…

LCD Soundsystem『Sound of Silver』(EMI/DFA)

DFAの共同創設者であるJames Murphyを中心とするバンドの2nd。ザラついた質感の音色と引き締まったアンサンブルが魅力のダンスパンク。ボーカルはエモーショナルだがバンドの演奏はミニマルでクールであり、低温のグルーヴでじわじわと場を盛り上げていく。…

Justice『†』(Cross)』(Ed Banger)

フランスのデュオによるデビュー作。同郷のDaft Punkに通じる音楽性だが、本人たちが公言している通り、ヘビーメタルの影響がある。それは主にシンセの歪んだ音色とドラマティックな楽曲に表れている(彼らは本作における自身のスタイルを「オペラ・ディスコ…

Jens Lekman『Night Falls Over Kortedala』(Service)

スウェーデンのアーティストの2nd。The Magnetic Fieldsの牧歌的で可愛げのあるインディーポップと初期のScott Walkerの優雅なバロックポップを合わせたような、暖かく朗らかなポップ。明快なメロディーと管弦による華やかなアレンジが作品を親しみやすくし…

Grizzly Bear『Friend EP』(Warp)

アメリカのバンドの、2nd『Yellow House』に続くEP。過去曲の再録音バージョンと、他アーティストによるカバーなどが収録されている。フルアルバムを差し置き本作を選出した理由は、そのサウンドのスケールの大きさだ。「Alligator (Choir version)」「Littl…

The Field『From Here We Go Sublime』(Kompakt)

ベルリンを拠点として活動するプロデューサー/DJのデビュー作。サンプリングをベースにした陶酔的なテクノ。サウンドはKompaktらしく滑らかで綺麗にまとめられている。Underworldと同様にじっくりと期待させてから爆発させるスタイルだが、本人が公言するGas…

The-Dream『Love/Hate』(Def Jam)

他アーティストへの楽曲・詞提供で名を上げたアメリカのSSW/プロデューサーのデビュー作。複雑ながら洗練されたR&B~ポップ。スッと抜けるような清涼感のある歌声でラップとソウルフルな歌唱を自在に行き来する。Christopher "Tricky" StewartとCarlos "L.O.…

Deerhunter『Cryptograms』(Kranky)

アトランタを拠点とするバンドの2nd。アルバムは二回に分けてレコーディングされ、その一回目にあたるアルバム前半(#1#~7)は獰猛なベースが牽引するクラウトロックとドローンサウンドが横溢するアンビエントが、後半は次作以降に繋がる音楽性の、おばけの…

Deepchord Presents Echospace『The Coldest Season』(echospace [detroit])

DeepChordのRod ModellとSoultekことSteve Hitchellのユニットによるデビューアルバムで、2007年にリリースした連作シングルをまとめて滑らかに繋げたもの。研ぎ澄まされた音響が聴き手をどこか荒涼とした場所へ誘う、アンビエント寄りのダブテクノ。一度ハ…

Dan Deacon『Spiderman of the Rings』(Carpark)

アメリカのアーティストのデビュー作。躁的でハイパーなバブルガムポップ。勢いのあるブレイクビーツにノイジーなエレクトロニクスを被せたサウンドは原始的なパワーに満ちている。楽曲はハッピーハードコアやガバテクノをベースに子ども向け番組のテーマソ…

Burial『Untrue』(Hyperdub)

アンダーグラウンドな活動で知られるロンドンのプロデューサーの2nd。ダークかつ親密な、ダブステップとアンビエントのハイブリッド。跳ねるような入り組んだビート、金属質のハードボイルドなサンプルと変調されたソウルフルなボーカルサンプルを特徴とする…

Bruno Pronsato『Why Can't We Be Like Us?』(Hello? Repeat)

アメリカ出身ベルリン在住のDJ/プロデューサーの2nd。Ricardo Villalobosなどに通じる、パーカッシブなサウンドでまとめられたミニマルハウス。ジャケットのイメージ通りダークでモノクロームな雰囲気がある。メロディーが断片的で抽象的なため取っつきづら…

Bjørn Torske『Feil Knapp』(Smalltown Supersound)

ノルウェーのアーティストの3rd。ダブ・レゲエの影響を受けた爽やかで瑞々しいハウス。ダブ・レゲエというと重苦しい…まではいかずとも、むさくるしい印象が少なからずあるのだが、本作はそれらの手法を取り入れつつも軽やかであり続けており、そのことが特…

Beirut『The Flying Club Cup』(4AD/Ba Da Bing!)

Zach Condonを中心とするアメリカのバンドの2nd。ブラスバンドを背景に深みのあるボーカルが熱く歌い上げる民族色濃いインディーポップ。バンドはオーケストラと呼ぶには小ぶりだが代わりに距離が近く、親密で生々しい迫力がある。楽曲はJacques Brelやフラ…

Battles『Mirrored』(Warp)

元Don Caballero、Storm & StressのIan Williamsによって結成されたアメリカのバンドのデビュー作。メンバーの経歴が雄弁に物語るハードコア~マスロック。多数のパートが高速かつ緻密に絡み合う様子は目まぐるしいが、脳がぐちゃぐちゃにされるような、ある…