2012

Exael『Ghost Hologram』(Beer On The Rug)

後にHuerco S.らと共に現代的なダブの流行を形作るExaelの1stアルバム。ここでは初期のOneohtrix Point Neverから素朴なアルペジオを除いたようなアンビエント~ドローンを展開している。特徴は全体に敬虔な、スピリチュアルな空気が満ちていること。もろに…

YYU『TimeTimeTime&Time』(Beer On The Rug)

直近の蒸気な流れを断ち切るようなリリースだ。デジタル世代のノスタルジーや不可思議なオリエンタリズムのようなものはここにはない。どこまでもパーソナルかつ内省的な……人知れず作られたアシッドフォークのような佇まいの作品だが、そのサウンドにはリア…

情報デスクVirtual『札幌コンテンポラリー』(Beer On The Rug)

Vektroid=Ramona Andra Xavierの三度目のリリース。国際交流的なものがテーマとしてあるらしく*1、それはジャケットや曲名からもなんとなーく感じられる。内容も国際的というか公共的な志向があるようで、David Sanbornなどスムーズ・ジャズやフュージョン…

Mediafired™『The Pathway Through Whatever』(Beer On The Rug)

ポルトガルのExo Tapesから2011年にリリースされていたもののリイシュー。ヴェイパーウェイヴ初期の作品の中ではサンプリングの元ネタが圧倒的に有名であり、それゆえにヴェイパーウェイヴ、というよりはEccojamsという手法が広く認知されたきっかけとなった…

Free Weed『Beer On The Drugs』(Beer On The Rug)

The MemoriesやWhite FangのメンバーでありGnar Tapesを運営する一人でもあるErik Gageのソロプロジェクト。Ty Segallを彷彿とさせるローファイでノイジーなガレージロック。基本的に楽曲の中心に歌メロがあり非常になじみやすい。実験的なところが少なく、…

Boy Snacks『Boy Snacks』(Beer On The Rug)

Angel 1によるBOTRからの2作目。World Seriesから名義を変えたことにも頷ける大胆な音楽性の変化で、どれだけ作風が幅広いのかと思わせる。内容は快適なラウンジやアンビエント、ゲームのメニュー画面の音楽のようなものが気まぐれに移り変わっていく雑多な…

シャムキャッツ『たからじま』(P-Vine)

千葉は浦安出身のバンドの、ミニアルバムを挟んだ2nd。ヨレたギター・サウンドと、同じくらいにヨレたバンド・アンサンブルで流行り廃りとは無縁のグッド・メロディーを響かせる。その様子はさながらPavementが初期のビートルズをカバーしているかのよう。楽…

ミツメ『eye』(mistume)

東京を中心に活動するバンドの2nd。ニューウェーブ・シンセポップ風のスタイルへの挑戦など新たなサウンドの探求もしつつ、基本は引き締まったバンド・アンサンブルで聴かせるギターロック。「cider cider」「towers」ではリズム感抜群のバンドのポテンシャ…

Zazen Boys『すとーりーず』(Matsuri Studio)

向井秀徳率いるバンドの4年ぶり5th。過去作を聴いていないので比較はできないが、複雑な楽曲を正確に弾きこなすバンドの運動神経が堪能できる内容となっている。テンポは速く、サウンドは硬質で、キメはいっぱいとわかりやすくカッコいいので人に薦めやすい…

YYU『TIMETIMETIME&TIME』(Beer On The Rug)

アーティストによるフォーク風のギターの弾き語り音声をダブステップ/ジューク通過後のビート感覚でカットアップした……アヴァン・フォーク作品? 元の音素材が乾いた質感なため最終的なアウトプットにもカラッとしたフィーリングがある。どういう場所で録音…

Voices From The Lake『Voices From The Lake』(Prologue)

日本のフェス「Labyrinth」をきっかけに生まれた、イタリア人テクノアーティストのDonato DozzyとNeelによるプロジェクトのアルバム。曲同士は全て繋がっており一つのライブセットのようになっている。線形なリズムの上でのスローなビルドアップという、テク…

Sun Araw『The Inner Treaty』(Sun Ark)

カリフォルニアを拠点とするアーティストのソロ6作目。ダブを通過したスモーカーズ・デライトなトリップ・ミュージックであることは変わらないが、今作では重さを極限まで減らし、音の隙間を拡大することでどこまでもとぼけた脱力ファンクを完成させた。この…

Shackleton『Music for the Quiet Hour』(Woe To The Septic Heart!)

ダブステップにトライバルなリズムと怪奇趣味を混ぜ合わせた特異なスタイルで知られるアーティストの2nd。Vengeance Tenfoldというボイス・アーティストと共に作られた本作は5パートから成る大作で、ホラーな音響で魅せる序盤、夜のジャングルに厳かなコーラ…

Sacred Tapestry『Shader』(PrismCorp)

ヴェイパーウェイブの仕掛人の一人であるVektroidの、別名義で発表された作品。1曲目こそ王道のヴェイパーウェイブだが、それ以降はまっとうなアンビエント/ニューエイジな楽曲を挟み、アルバムは次第にサイケデリックな色を増していく。「花こう岩Cosmorama…

Ricardo Villalobos『Dependent and Happy』(Perlon)

チリで生まれドイツで育ったDJの3枚目のスタジオアルバム。プログラミングの細かさに圧倒されるミニマル・ハウスで、職人の手によって配置された非常に細かな音素材群が奇妙なグルーヴを紡ぎだす。とにかくサウンドが小気味良く、危険な中毒性がある。コミカ…

QN『New Country』(SUMMIT)

神奈川出身のラッパー/プロデューサーがSIMI LAB脱退後にリリースした作品。英語も自然に組み込まれた、滑らかに流れていくテンション低めのラップはもちろんだが、乾いた質感の小気味良いトラックがとても気持ちいい。タイトだがストイックではなく遊び心が…

Ogre You Asshole『homely』(Vap)

Modest Mouse(バンド名を決めるきっかけにもなった)をはじめとするUSインディに影響を受けたロックバンドの飛躍作。クラウトロック仕込みのグルーヴで『ゆらゆら帝国のめまい』に通じるメロウなシティポップをスケール大きく展開していく。抽象的かつ寓意…

Julia Holter『Ekstasis』(Rvng Intl.)

ロサンゼルスに拠点を置く女性SSWの2nd。アタックの柔らかい音でまとめられたチェンバー・ポップ。メロディーや和声にどことなくクラシック音楽のような趣があり(彼女が「アカデミック」と形容される所以と思われる)、その点でSSWとしての強力なオリジナリ…

Jam City『Classical Curves』(Night Slugs)

Night Slugsからのアルバムとしては2作目にあたるJack Lathamのデビューアルバム。ベースミュージックの肝とも言えるベースの持続音を排しソリッドな音でまとめることで楽曲のリズム部分を極端に強調したサウンドが特徴。ソリッドでビビッドな音色が生み出す…

Frank Ocean『Channel Orange』(Island・Def Jam)

OFWGKTA出身のシンガーによるメジャーデビュー作。上品にリヴァーブのかけられた柔らかなサウンドが特徴の内省的なR&B。多彩な楽曲が収録されているが、個人的には「Sierra Leone」や「Pilot Jones」などで聴ける洗練されたソングライティングが非常に魅力的…

Fiona Apple『The Idler Wheel ...』(Epic)

女性SSWによる7年ぶりの新作。ピアノとパーカッション(+ベース)というミニマルな編成で、格調高い音色と生々しい録音により異様な緊張感が生まれている。ボーカルはリズム感、表現力ともに最高のすばらしいパフォーマンスで、流し聞きを許さないような迫…

Dirty Projectors『Swing Lo Magellan』(Domino)

David Longstrethを中心とするバンドの6作目。不定形なリズムを奏でるパーカッション、女声の華やかなコーラス、フリーキーなギターなど、基本的な音楽性は前作と地続きだが、今までよりも「歌」を中心に据えた楽曲が揃えられている。キャッチーなのは冒頭の…

Death Grips『The Money Store』(Epic)

Hellaなど様々なバンド・プロジェクトに関わるドラマーのZach Hillを中心として活動する3人組のメジャーデビュー作。エレクトリックな質感の暴力的なサウンドに凄まじい風貌のMC Rideによる怒号とも取れるようなラップが被さる。ほとんどの曲が2~3分の長さ…

Cero『My Lost City』(カクバリズム)

前作から楽曲・演奏共に大幅にレベルアップした2nd。特に友人やファンを招いて録音されたという特大スケールのコーラスワークには「大勢で力を合わせることの喜び」が詰まっており、作品に豊かさと祝祭感をもたらしている。大量の引用や隠喩の組み込まれたコ…

Burial『Truant』(Hyperdub)

2012年の年末に唐突にリリースされたシングル。収録されている2曲共に複数のパートから成り立つ10分を超える大曲で、アーティストの非凡な構成力を窺わせる。今作の一番のポイントが楽曲のコーラス部分における祝祭的・陶酔的なフィーリングで、Burialの従来…

Balam Acab『Wander『Wonder』(Tri Angle)

レーベルのカタログナンバー1の作品となった『See Birds』に続くアルバム。まるで水中から鳴らされているようなくぐもった音響が特徴の神秘的なR&B。全編に渡って水の音がフィーチャーされており、まさにジャケット通りの「深海音楽」となっている。重く響…

Azealia Banks『1991』(Interscope)

アメリカはハーレム地区出身のラッパー/シンガーによるEP。プロデューサーに時代の寵児といえるLone、Machinedrumらを迎え、現代的なビート・ミュージックとヒップホップを見事に融合させたサウンドを作り上げた。収録された4曲すべてがキラーで、インパクト…

Avec Avec『おしえて』(Maltine)

Seihoと二人でSugar’s Campaignとしても活動しているトラックメイカー/作曲家のTakuma HosokawaによるソロプロジェクトであるAvec Avec。音数控えめの上品なアレンジやs.l.a.c.k.を彷彿とさせるヨレたビートなど注目点はいくつかあるが、なによりもポップス…

Andy Stott『Luxury Problems』(Modern Love)

昨年の2枚のEPに続くアルバムは、Andyのピアノの教師をしていたというAlison Skidmoreの耽美なボーカルを大きくフィーチャー。EPのジャケットが象徴していたトライバルなイメージから一転、4AD的なゴシック風味のダブ・テクノという領域を開拓した。超重量級…

Actress『R.I.P.』(Honest Jon's)

まるで悪酔いしたかのような、抽象的で不安定なダンス・ミュージックを展開していた2010年作『Splazsh』に続く3枚目のアルバムは、掴めなさはそのままに、よりアンビエントに寄った内容になった。特定のジャンルにとらわれない、「Actressの音楽」としか呼べ…