2016

mmph『Dear God』(Beer On The Rug)

静物を写したゴシックなアートワークがどこか不穏な空気を伝えている。地を這うような重低音と聴き手の恐怖を煽る音の演出が光る、架空のホラー映画のサントラのような作品。過剰に劇的な作曲や、ピアノやストリングスの効果的な起用からは映画音楽の素養も…

Location Services『In Passing』(Beer On The Rug)

前作から約11カ月ぶりの二作目で、どちらもギリギリ2016年内にリリースされている。音楽性もほぼ地続きだが、こちらの方が微妙~に内省の色が濃くなっているような。前作を『Music For Airports』とするなら今作は『On Land』で、際どいレベルではあるが公共…

Orthodontrix『First Visit』(Beer On The Rug)

ブルックリンのクィアなアーティストのデビューEP。空間を埋め尽くすマッシブな音遣いが特徴のドリーミーなエレクトロニカ。…というか音像的にはもうシューゲイザーの領域に達しており、言ってしまえば「PC Musicなどのビビッドなサウンドの流行を経た後のUl…

Hollow Gem『A Distant Paradise』(Beer On The Rug)

Jayden Ciprianoと、ポートランドのDaniel Faulknerのデュオによる3作目。細切れのサウンドの破壊的なエクスペリメンタルとアンビエントの組み合わせ。中心人物であるFaulknerはグラインドコアという危険で極端な音楽に造詣が深く(現在もHuman Effluenceな…

Angel Dust Dealers『Romantic Collection』(Beer On The Rug)

ウクライナは首都キーウのアーティストの作品。翌年にカナダのヴェイパーウェイヴレーベルLost Anglesからカセットでリイシューされており、そういう意味ではヴェイパーウェイヴなのかもしれないが、世界観はともかく音楽性はずっとわかりやすい。ダークな雰…

De Tuinen『Wandelen』(Beer On The Rug)

Samling-Recordingsからのフルレングスを挟んでBOTRへ二度目の登場。ミュージックコンクレート+ドローンな約30分の1トラック。過去作を見るに、短くまとまった楽曲を作る能力もあるのだが、最終的にはすべてが繋がった、広漠とした長尺トラックとしてまとめ…

massacrexx9『Music For Tonedrone Kit in Stainless Steel Fantasia』(Beer On The Rug)

DiscogsではPolonius(Seif Gaber)というアーティストと同一人物とされているが(確証なし)……Bandcampページの文章も含めいろいろと謎の作品。神秘的な演出めいた1曲目以降はひたすらエクスペリメンタルなサウンドの不定形なパフォーマンスが続く。内臓の…

Yssue『Cycle』(Beer On The Rug)

ロシアはモスクワのプロデューサーDmitry Nekrotkovのデビュー作。きめ細かくプログラムされたドラムと淀みのないベースがリードする、100%クラブ仕様なテクノ~ハウス。伝わるかわからないが、例えるならPitchforkやTiny Mix TapesではなくResident Advisor…

Suryummy『Genesis Clarity』『Photon Slobber』(Beer On The Rug)

音楽性が似通っているため2017年の次作も一緒に取り上げる。サンフランシスコのデザイナー・アニメーター・ミュージシャン…多才なアーティストのEmmett Feldman。Graham Kartnaと同じく映像分野でも活躍しており、2021年のデモリール*1によればプロジェクシ…

Xix Tropic『Liani Crupty』(Beer On The Rug)

キューバ系アメリカ人の、この名義での唯一作? #3のみストリングスと簡素なビートが出てくるが、基本はシンセのソロ。別段クラシックなどのルーツは感じない、自由な演奏 が約25分間を埋めている。気ままに空を舞う蝶を追いかけているかのような(実際に聴…

Location Services『Music For Quiet Rooms』(Beer On The Rug)

Magic FadesのメンバーであるMike GrabarekとハーピストのJoshua Wardのデュオの1stアルバム。1曲目のWindowsのSEを含む活発なオフィスの環境音(後は最終曲まで出てこない)に注意が向くが、音楽のベースはいたって真っ当なハープ中心のアンサンブル。空間…

Riohv『Green Room』(1080p)

(プレスリリース翻訳) モントリオールからオタワのプロデューサーRiohv (aka Braden Thompson) によるエレクトロ、IDM、ブレイク、ハウスのグラブバッグ12インチEPは、2014年にリリースされた同様の地図を飛び越えた1080pのカセット『Moondance』に続くも…

Jayda G『Sixth Spirit Of The Bay』(1080p)

(プレスリリース翻訳) カナダのプロデューサーJayda Gによる軽快でアクアマリンなハウス・グルーヴに、モントリオールのデュオCafe Lanaiのトラック「Girl Music」のリワーク2曲からなる楽しい12インチ。 2016年の春から夏にかけて制作された『Sixth Spiri…

Luis『Dreamt Takes』(1080p)

(プレスリリース翻訳) NYのプロデューサーLuis aka Brian PineyroによるIDM12インチの快適で暖かなブランケット。距離と分離をテーマにした4曲の新曲が、街灯りのエレクトロドリフターと思慮深いブレイクとして形になっている。 避難民やさまざまなレベル…

Minimal Violence『Night Gym』(1080p)

(プレスリリース翻訳) バンクーバー出身のAshlee LukとLida Pのデュオ、minimal violenceによる衝動的で直感的なハードウェアハウス&テクノ。『Night Gym』に収録されている5つのトラックは都会の風景のサウンドトラックだ。質感のあるシンセ、重いキック…

Umfang『Riffs』(1080p)

(プレスリリース翻訳) UMFANGのヴァイナルデビュー作『Riffs』は、昨年1080pでリリースされたカセット『Ok』に続く、ソフトなバンガーとビートレスな運動が特徴だ。この5曲入りの12インチにて、ブルックリン在住のプロデューサーはあらゆるところでアンビ…

Image Man『Glance』(1080p)

(プレスリリース翻訳) 重要な新人レーベルSUNAL/PERABOBからのリリースに続く、ニューヨーク出身のImage Manによる幻想的なハウスとテクノ。ループとドラムマシンで構築された、風当たりの強い逆説的なトラック(それらは全てライブ録音された)を収録した…

J. Albert『Strictly J』(1080p)

(プレスリリース翻訳) NYCの多作なプロデューサー、J AlbertことJio Albertの4つの新しいルーズで美しい都会的なハウスグルーヴのマントラはいつも通りシンプルであること、そしてもちろん「Strictly J」であることだ。 DJ Osom名義でSoundcloudからリリー…

Perfume Advert『Big Gete Star』(1080p)

(プレスリリース翻訳) ミドルズブラの若者、Aaron TurnerとTom BrownがPerfume Advertとして1080pに帰ってきた。このレーベルの初期のカセットリリースとしては画期的と言える作品(2013年の『Tulpa』)に続き、テックハウスと深いレイヤーのハウス、極め…

Zozi『Mellow Vibe』(1080p)

Sophie Sweetland(aka D. Tiffany)のZozi名義の12インチ。名義変更に伴い音楽性もハウスからジャングル~ドラムンベースへと変化。直球なタイトルで、特にA面でまさにメロウなムードが追究されている。タイトルトラックのA1はそのメロウさによって見出され…

Ex-Terrestrial『Paraworld』(1080p)

(プレスリリース翻訳) モントリオールのAdam Feingoldによる高高度を目指すメロウな新作は、昨年1080pからリリースされたカセット『Nuff Zang』に続き、チルビエントとシェイク&ブレイクを組み合わせたEx-Terrestrial名義の4トラック12インチに滑り込んで…

Sasha Jan Rezzie『All My Dreams』(1080p)

(プレスリリース翻訳) ブルックリンのプロデューサー、Sasha Desree、Jan Woo、Rezzie Avissarが贈る、超エモーショナルでメロディー飽和のヘビーヒッター5トラック。Sasha Jan Rezzieは、未来から来たクラシックなハウスボーイズバンドだ。 デビュー12イ…

Khotin『Baikal Acid』(1080p)

(プレスリリース翻訳) エドモントンを拠点に活動するプロデューサーKhotinは、2014年にリリースしたカセット『Hello World』と同様な雲に頭を突っ込み、ディープで内省的な707ハウスの4トラック12インチを発表した。 『Baikal Acid』は両面とも内省的だ。A…

Alpha Barry『Love』(1080p)

ここまでの1080p作品の情報は基本的に公式のbandcampページとDiscogsのページを参考にしていたのだが、そのどちらにも載っていない#69のリリースとして今作がある。いやDiscogsにすら載っていないのだから「ある」と断言しづらいのだが、とりあえずBleepにて…

Complete Walkthru『Complete Walkthru』(1080p)

(プレスリリース翻訳) Max McFerrenは2014年の『Club Amniotics』から始まったMCFERRDOG三部作の完成を回避し、代わりに初期のテクノのパイオニアのストーリーテリングと喜劇的ライフスタイルの考察に大きく触発されて分岐した道を歩み、再びカセット形式…

DJ Voilà『Aimless Summer』(1080p)

(プレスリリース翻訳) DJ Voilà(aka Simon Chioini)はケベック出身で、そしてこの作品はモントリオールの夏への頌歌である——クラシックなアンビエント/エクスペリメンタルジャンルの語彙をクラブベースの断片に落とし込んだ、爽やかで鮮やかなリリースだ…

¬ b『Reflection Disc 1&2 2012-2016』(1080p)

アメリカのプロデューサーLee Bannonのイニシャルを取り、「L」を反転した名義…なのだろう。調べてもあまり情報が出てこないのだが、なんとなく2012~2016年の間に制作された未発表曲をまとめたものなのだと思う。いかんせん大きなリリースのため全容は掴め…

Elka『Chants』(1080p)

(プレスリリース翻訳) バンクーバーのプロデューサー、Elka aka Elan Benaroch(あるいは""ESB"")による内向的なハウスのフルレングスカセットで、遥か彼方のヴァイブと神秘的なタッチのシーケンスが、この名義でのデビューアルバム『Chants』に収録され…

You're Me『Plant Cell Division』(1080p)

バンクーバーのScott GaileyとYu Suのデュオによる浮遊感のあるテクノ~アンビエント。楽曲の構造に影響するほどの大胆なツマミ操作もといエフェクト処理があり(#3#4あたりではAndy Stottの名前も浮かぶ)、そういう意味で一線を越えて実験的ではあるのだが…

James K『Pet』(1080p)

SETH以来の登場となるJames Kのフルアルバム。ヴォーカルの表現力にさらに磨きをかけ、エレポップとエクスペリメンタルなアンビエントの中間の興味深い領域を開拓している。そのアートワークからGrimesを連想するが、あそこまでのポップさはなくともスタイル…