2004

Phoenix『Alphabetical』(Astralwerks/Source)

フランスのバンドの2nd。ロックとファンク・R&Bを混ぜ合わせたような折衷的なサウンドを聴かせる。モノクロで表現されたジャケットが象徴するようにシックで内省的な雰囲気でまとめられている。オシャレで洗練されたポップセンスが持ち味であり、例えば#2「R…

Nick Cave & the Bad Seeds『Abattoir Blues/The Lyre of Orpheus』(Mute)

オーストラリアのバンドの13作目?にしてダブルアルバム。ブルースやゴスペルの影響色濃い骨太なロック。London Community Gospel Choirのメンバーによるコーラスが作品に荘厳さを加えている。『Abattoir Blues』はハードなロックンロールで熱狂的なエネルギ…

Mylo『Destroy Rock and Roll』(Breastfed)

スコットランドのアーティストのデビューアルバム。ノスタルジックなムードのメロディアスなダンスミュージック。有り体に言えばDaft Punk『Discovery』のサウンドを丸く暖かいものに変え、ホームリスニング向けに尺を調整したような作品だが、作品の完成度…

Moodymann『Black Mahogani』(Peacefrog)

アメリカのデトロイトを拠点とするプロデューサーの5作目となる本作ではテクノやディープハウス、ジャズの境界を縫うような、壮大で神秘的なサウンドジャーニーが展開される。楽曲の構造やサウンドはかなりアブストラクトであり、明確なフックがないことがポ…

Max Richter『The Blue Notebooks』(130701)

クラシックの教育を受けたイギリスのアーティストの2nd。クラシック音楽にエレクトロニクスと、文学作品の朗読を含むファウンド・サウンドを組み合わせた作品で、ポストクラシカルというジャンルの代表作のひとつ。楽曲は比較的伝統的ではっきりとしたメロデ…

Madvillain『Madvillainy』(Stones Throw)

MF DoomとMadlibというヒップホップジーニアスのタッグによる作品。Madlibのサイケデリックで埃っぽいトラックにMF Doomの予測できないフロウが乗る。全体に酩酊したような感覚があり、揺れるようなグルーヴにのせてアルバムは気まぐれに進んでいく。「Curls…

Junior Boys『Last Exit』(KIN)

カナダのデュオのデビュー作。R&Bをベースにした楽曲と控えめな電子音を組み合わせた、繊細でミニマルなエレポップ。十分な余白の取られた時空間にエッセンシャルな音だけが配置されていく様子には洗練された美しさがある。初聴時はそのサウンドがどこか薄味…

Jóhann Jóhannsson『Virðulegu Forsetar』(Touch)

アイスランドのアーティストの2nd。金管楽器を中心としたオーケストラとささやかなエレクトロニクスによる、スロウで壮大なミニマルミュージック。冒頭で提示されるシンプルで穏やかなテーマが形を変えて繰り返し演奏される。反復の合間には低音のドローンが…

Joanna Newsom『The Milk-Eyed Mender』(Drag City)

アメリカのSSWのデビューアルバム。高音の、子どもが歌っているかのようなコケティッシュなボーカルと丸い音色のハープが耳を引く美しいフォーク。同時期に注目を浴びたDevendra Banhartなどと並べてフリー(ク)フォークの旗手と目されることもあるが、こち…

Iron & Wine『Our Endless Numbered Days』(Sub Pop)

アメリカのSSWの2nd。牧歌的で美しいフォーク。Brian Deckをプロデューサーに迎え、正規のレコーディング・スタジオで録音されたことでサウンドは明瞭さを増し、楽曲の持つ繊細な美しさがより引き立つようになった。音楽的には実験もジャンルの横断もない、…

The Hold Steady『Almost Killed Me』(Frenchkiss)

ミネアポリスのバンドLifter Pullerの解散後に、元メンバーのCraig Finnが中心となって結成されたバンドの1st。クラシックな風格のある、堂々としたロック。恰幅の良くなったThin LizzyあるいはBruce Springsteenのようなサウンドにはロックファンなら抗えな…

The Go! Team『Thunder, Lightning, Strike』(Memphis Industries)

イギリスのバンドのデビュー作。サンプリングを基調に作られたダンサブルなポップ。楽曲・サウンドの印象はThe Avalanches『Since I Left You』とよく似ており、それのインディーロック版と呼んでも差し支えないと思われる。一曲一曲がはっきり区切られ、ま…

The Foreign Exchange『Connected』(BBE)

アメリカのラッパーPhonteとオランダのプロデューサーNicolayが、The Postal Serviceよろしく直接会うことなくデータのやり取りで完成させた本作はヒップホップのジャンルの中でもユニークな作品となった。ストリートのハードさや生々しさといったものがない…

The Fiery Furnaces『Blueberry Boat』(Rough Trade)

アメリカの兄妹バンドの2nd。長く入り組んだ楽曲が特徴のサイケデリックで演劇的なロック。70分を超える長大な作品だが、全編がGenesis「Supper's Ready」や『Abbey Road』のB面のようなプログレッシブな、というよりは分裂症的な展開で満ちている。それだけ…

Erlend Øye『DJ Kicks』(IK7)

Kings of Convenienceのメンバーとしても知られるノルウェーのアーティストによるDJミックス作品。本作をユニークなものにしているのは彼の特異なミックススタイルで、序盤のCornelius~Phoenixの繋ぎがわかりやすいが、なんと彼は楽曲の糊付けに自身の歌声…

Dungen『Ta Det Lugnt』(Subliminal Sounds)

Gustav Ejstesを中心とするスウェーデンのバンドの3rd。ヴィンテージなサウンドのお手本のようなサイケデリックロックで、それこそTame Impalaなどに直接通じる音楽である。太陽が輝く爽やかなポップから酔っぱらったかのようなぐにゃぐにゃのサイケデリアま…

Devendra Banhart『Rejoicing in the Hands』(Young God)

アメリカのSSWの3rd。個性的なボーカルのサイケデリックでフリーキーなフォーク。本人の弾き語りをベースに、Young GodレーベルのボスMichael Giraと共にささやかなオーバーダビングを施したサウンドは、ミニマルで牧歌的ながら時おり奇妙さが顔を出す。本作…

Dear Nora『Mountain Rock』(Magic Marker)

Katy Davidsonを中心とするアメリカのバンドの2ndで、2017年に13年ぶりにリイシューされた。歌心のあふれるシンプルなギターの弾き語り。ミニマルの極致とも言えるスタイルで、本作と比べればIron & Wineの作品もVashti Bunyanの作品もとても丁寧に編まれて…

The Dead Texan『The Dead Texan』(Kranky)

Stars of the LidのAdam Wiltzieと、作曲家であり映像作家でもあるChristina Vantzouのデュオによる音楽と映像を組み合わせた作品で、CDとDVDのセット。Stars of the Lidの滑らかなドローンサウンドがベースだが、よりはっきりとしたメロディーを持ち、聴き…

Cocorosie『La Maison De Mon Rêve』(Touch And Go)

アメリカの姉妹デュオによるデビュー作。チープでローファイな質感が特徴のアシッド/フリーフォーク。ファウンド・サウンドのふんだんに盛り込まれたサウンドはエクスペリメンタルだが楽曲自体はシンプルで親しみやすい。時おり挟まれる古いおもちゃの音声は…

Caetano Veloso『A Foreign Sound』(Nonesuch)

ブラジルの偉大なアーティストがアメリカのスタンダードな曲をカバーしたアルバムで、全編英語で歌われている。オーケストラをふんだんに用いた優雅な「Diana」や、エクスペリメンタルなギターが響く幽玄な「Nature Boy」、最小限の音で最大のファンクネスを…

Brian Wilson『SMiLE』(Nonesuch)

The Beach Boys『Pet Sounds』の次作として製作されたが諸々の問題によりお蔵入りとなっていた作品を新たに作り直したもの。ボーカルハーモニーを中心に据えた牧歌的なポップ。楽曲にはAriel Pinkに通じるような錯綜したところがあり、馴染むまでにある程度…

Arcade Fire『Funeral』(Merge)

カナダのバンドのデビュー作。メンバーの家族の死にインスパイアされたコンセプチュアルでエモーショナルなロック。テンションの振れ幅の大きい、スケールの大きな楽曲が特徴。穏やかに始まるオープニング「Neighborhood #1』(Tunnels)」も時間をかけて盛り…

Animal Collective『Sung Tongs』(Fat Cat)

アメリカのバンドの5th。形式にとらわれない楽曲とエクスペリメンタルなサウンドが特徴の原始的なフォーク。どの曲にも明確なメロディーがあるという点で、彼らのそれまでの作品よりも馴染みやすくはあるのだが、それでもいまだに他のどれにも似ていない楽曲…