2006

TV on the Radio『Return to Cookie Mountain』(4AD/Interscope)

アメリカのバンドの2作目。複数のジャンルのスタイルを混ぜ合わせた熱狂的で混沌としたロック。そのカオスの一例として、オープニングトラックの「I Was a Lover」を挙げてみよう。ヒップホップのビートに妖しげなシタール、重厚なホーンのサンプリングとビ…

Sufjan Stevens『Songs For Christmas』(Asthmatic Kitty)

アメリカのSSWが2001年~2006年の間におおよそ年に一枚のペースで発表したEP5作をまとめたBOXセット。名前の通り、全42曲の約半分は伝統的なクリスマスソングで、残りはSufjanのオリジナルである。作品にはSufjanのアレンジの才能の進化のドキュメントのよう…

Scott Walker『The Drift』(4AD)

アメリカのアーティストの11年ぶりのオリジナルアルバム。この音楽をどう形容すればいいのか。音楽ではあるがポップの文脈にはなく、これ以外のほとんどの作品に通用する感性や聴き方が本作には通用しない。Walkerが“blocks of sound"と呼ぶ手法で作られた楽…

Panda Bear『Person Pitch』(Paw Tracks)

Animal Collectiveのメンバーでもあるアメリカのアーティストの3rd。エフェクトが幾重にも重ねられたダビーなサウンドとシンプルなメロディーのループが特徴のサイケデリックポップ。言葉にすれば単純だが、それぞれの要素の程度が異常なレベルで、正直、ポ…

My My『Songs for the Gentle』(Playhouse)

ドイツのDJ/プロデューサーの三人組のデビュー作。明瞭な音遣いが特徴のミニマルハウスで、ゆったり取られた音のすき間が細かな演出を際立たせる。大まかに3部に分けられるアルバムは前半がミステリアスでファニー、中盤がディープでドラマチックで、後半は…

Lindstrom『It's a Feedelity Affair』(Smalltown Supersound)

ノルウェーのアーティストが自身のレーベルFeedelityからリリースした作品をまとめたコンピレーション。明るく、開放感のあるディスコ~ハウス。サウンドはギターの演奏など打ち込み以外の音もふんだんに使用された折衷的なもの。本作の特徴はそのサウンドの…

Joanna Newsom『Ys』(Drag City)

アメリカのSSWの2nd。全5曲55分で、製作にはVan Dyke Parks、Steve Albini,、Jim O'Rourkeが参加……この前情報の時点ですでに“事件”の様相を呈している。しかし期待に反してその内容は人を選ぶものとなった。問題はサウンドやパフォーマンスではなく楽曲だ。…

Jay Reatard『Blood Visions』(In The Red)

複数のバンドで多数の作品を残したアメリカのアーティストの1stソロ。速く、鋭く、やかましいエクストリームなガレージロック。ほどんどの曲は1~2分の長さでアルバムのトータルタイムは30分を切る。演奏は聴き手の尻を蹴り飛ばすような勢いに満ちており、音…

J Dilla『Donuts』(Stones Throw)

アメリカのヒップホッププロデューサーの2nd。ラフさと深さを兼ね備えたスリリングなインストヒップホップ。ほとんどの曲が1分前後の尺で、気が付くと次の曲へ移り変わっている。基本的にじっくりと時間をかけて盛り上がることはないが、それを構築美の欠如…

Hot Chip『The Warning』(EMI/DFA)

イギリスのバンドの2nd。カラフルな電子音が耳を引くスマートなエレポップ。サウンドは幻想的なエレクトロニカのキュートで人懐っこいものからDFA印の生々しくザラついたものまでと幅広いが、どの音も非常に丁寧にトリートメントされており、一音一音が強い…

Girl Talk『Night Ripper』(Illegal Art)

アメリカのDJによる3作目。2 Many DJsなどが世に広めたマッシュアップという手法は本作でさらに突き詰められ、約40分の間に300以上ものサンプリングが入り乱れることに。その詰め込み具合は原曲の良さを残しながらできるギリギリのところまできている。1ルー…

Ghostface Killah『Fishscale』(Def Jam)

Wu-Tang Clanのメンバーであるアメリカのラッパーの5th。ポップさとハードさのバランスの取れた完成度の高いヒップホップ。本作と名盤と名高い『Supreme Clientele』との主な違いはプロデューサー陣にある。『Supreme~』でトラックの半分近くを手掛けていた…

Destroyer『Destroyer's Rubies』(Merge)

Dan Bejarを中心とするカナダのバンドの7作目。ドラマティックでスケールの大きなロック。熱狂的なクレッシェンドと、思わず一緒に歌いたくなってしまう印象的なリフレインが聴き手を捕えて離さない。情熱的な楽曲の構造は当然演奏者にも影響し、楽曲は彼ら…

Califone『Roots and Crowns』(Thrill Jockey)

シカゴのバンドの6作目。ゴツゴツ・ガチャガチャした手触りの迫力あるサウンドは健在だが、本作では楽曲がキャリアでもトップクラスにポップでキャッチーになっている。#3「Sunday Noises」のストレートに美しいメロディーがバンドのブレイクスルーを告げて…

Bonnie “Prince” Billy『The Letting Go』(Drag City)

アメリカのSSWの、この名義における7作目(カバー作等含む)。Björkとの仕事で高名なValgeir Sigurðssonによってアイスランドで録音された本作は慎み深く、どこか敬虔な響きを持っている。ベースは素朴なフォークだが、Faun FablesのDawn McCarthyによるコー…

Belle and Sebastian『The Life Pursuit』(Matador)

イギリスのバンドの6作目。太陽のように明るく暖かい、瑞々しいインディーポップ。音楽的な冒険はなく、ただ楽曲のポップさのみで確固たる地位を築いている。アレンジはどこまでも整理されており、これ以上足せる音も引ける音もない。音楽とは音を足せばより…

Arctic Monkeys『Whatever People Say I Am, That's What I'm Not』(Domino)

イギリスのバンドのデビュー作。楽器が密度高く絡み合う、ダンサブルなギターロック。曲の多くは2分台だが、そのどれにも多数のアイデアが詰まっており、また演奏のテンションの高さも相まって非常に濃密な印象を受ける。バンドのドライブ感は相当なもので、…