2000

Caribou『Up In Flames』(Leaf)

カナダのアーティストのManitoba名義の最終作で、Caribouに名義を買えた後、2006年にもリイシューされた。Four TetのがちゃがちゃしたフォークトロニカにElephant 6のノスタルジックで人懐っこいソングライティングとサイケデリックなサウンドを混ぜ合わせた…

Beck『Sea Change』(DGC/Geffen)

アメリカのSSWの8th。内省的・感傷的なフォークで、その背景には9年間にも及んだ彼のスタイリストとの交際関係の終わりがあったようだ。『Histoire de Melody Nelson』をベースに繊細なエレクトロニクスを加えたようなサウンドは柔らかく浮遊感があり、全体…

Yo La Tengo『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』(Matador)

アメリカのバンドの9作目。豊かな残響が生み出すやわらかなアンビエンスが特徴のインディーポップ。ほとんどの曲が聴き手を優しく包み込むような穏やかなフィーリングで満ちており、キャリアでも屈指の癒し系なアルバムである。唯一、#9「Cherry Chapstick」…

Vladislav Delay『Multila』(Chain Reaction)

Chain Reactionから99年と00年にリリースされたEPをアルバムという形でまとめたもの。サイケデリックで出口の見えないダブテクノ。ダブのズブズブな音響の中で環境音やSE、ASMR的な物音が渦を巻く。抽象的で捉えどころのない作品だが、モクモクとしたミステ…

Sigur Rós『Ágætis byrjun』(Smekkleysa)

アイスランドのバンドの2nd。シューゲイザーを通過した持続的な音遣いや、ピアノと管弦による綺麗でふくよかなアレンジが耳を惹くシンフォニックなポストロック。ほとんどの曲が6分を超える長尺で、聴き手をじっくりと恍惚に導いていく。特に#7「Viðrar vel …

The Sea And Cake『Oui』(Thrill Jockey)

シカゴを拠点とするバンドの5th。風通しの良いギターと正確に・軽快に跳ねるドラムを中心とした爽やかなロック。オープニングを飾る「Afternoon Speaker」の軽やかさに魅了されない人がいるだろうか? 時おり顔を出す室内楽的なアレンジやささやかなエレクト…

Ryan Adams『Heartbreaker』(Bloodshot)

Whiskeytownというバンドの元フロントマンのソロデビュー作。痛いほどに生々しいオルタナティブ・カントリー。声が掠れるのもいとわない情熱的なボーカルのパフォーマンスが感情の迸りをダイレクトに伝える。アップテンポでロックな楽曲で幕を開けるが、楽曲…

Radiohead『Kid A』(Capitol)

イギリスのバンドの4th。Warp Recordsの諸作を筆頭に様々な音楽を消化した結果、誰も聴いたことがないような音楽を作り上げた。本作を特定のジャンルに括ることは難しい。どの曲も実験性に満ちているが驚くべきことにアルバムの流れは良好で、中盤のアンビエ…

Queens of the Stone Age『Rated R』(Interscope)

Kyussの元メンバーらによって結成されたカリフォルニアのバンドの2nd。分厚い轟音を身にまとい重心低く突き進むストーナーロック。薬物の名前を連呼する1曲目「Feel Good Hit of the Summer」に続き、多くの曲で薬物・アルコールについて歌われているが、バ…

Pinetop Seven『Bringing Home The Last Great Strike』(Truckstop)

Darren Richardを中心とするシカゴのグループの3作目。中南米や東欧の伝統音楽を消化したオルタナティブなカントリー。室内楽的な編成やビブラートを効かせて深く歌声を響かせるボーカルスタイルなど、Father John Mistyに通じる部分が多々あるが、雰囲気は…

The New Pornographers『Mass Romantic』(Mint)

Neko CaseやDestroyerなど他プロジェクトでも活動するメンバーが揃ったカナダのグループのデビュー作。突き抜けたキャッチーさを備えた、お手本のようなパワーポップ。いかがわしいグループ名とは裏腹に音楽性は非常に爽やかで、高音の透き通ったボーカルと…

Modest Mouse『The Moon & Antarctica』(EPIC)

アメリカのバンドの三作目であり、初のメジャーレーベルからのリリース。混沌と平穏を行き来するスケールの大きなロック。プロデューサーのBrian Deck(元Red Red Meat)はアルバムにThe Beta Bandのような宇宙的でサイケデリックな味わいを加えている。これ…

Luomo『Vocalcity』(Force Tracks)

フィンランドのSasu Ripatti(a.k.a. Vladislav Delay)の、主にボーカルハウスをリリースしている名義での1st。グリッチを通過したミクロな音遣いと、ダブテクノの音響とサイケデリックな感覚を混ぜ合わせ、ハウスミュージックとして昇華させたもの。グリッ…

I-f『Mixed Up In The Hague Vol. 1』(Panama)

オランダのDJ/プロデューサーのDJミックス作品。イタロ・ディスコと呼ばれる、イタリア産のエレクトロ・ディスコを広く世界に紹介した作品として知られる。ボコーダーで加工されたボーカルが飛び交う音楽にはB級のSF映画のような雰囲気がある。ジャンルの最…

Godspeed You! Black Emperor『Lift Your Skinny Fists like Antennas to Heaven』(Kranky)

カナダのグループの2nd。管弦も交えた大所帯で壮大なインストゥルメンタルをじっくりと聴かせる。ポップソングにあるようなキャッチーなリフなどは存在しないが、それでも興味深く聴き続けられるのは楽曲の構成や演出が巧みだからか。サウンド的に近いのは映…

GAS『Pop』(Kompakt)

ドイツのアーティストの4th。ダブの影響色濃いアンビエントで、エフェクトの重ねられた濃密な音の靄の中でストリングスやベースのループ、風や水を想起させる具体音が重ねられる。こだわり抜かれた音響は(その名の通り、)まるで音が気体として実体を持ち自…

Daniel Bell『The Button Down Mind Of Daniel Bell』(Tresor)

デトロイトやベルリンを拠点とするDJ/プロデューサーのDJミックス作品。クールでファンキーなミニマルハウス。Ricardo VillalobosやHerbert、Farbenらをフィーチャーした本作は、クリックやミニマルというジャンルが一般に流行する前から——さらに言えば『Cli…

D’Angelo『Voodoo』(Virgin)

アメリカのアーティストの2nd。ヘビーさとスイートさを兼ね備えた極上のソウル・ファンク。一番の特徴は隙間の多く取られたアレンジと、「(テンポは維持しつつ)音符をわざと遅らせて演奏する」レイドバックしたプレイが組み合わさって生まれる強力なグルー…

Common『Like Water for Chocolate』(MCA)

シカゴ出身のアーティストの4th。本人も属するSoulquariansの面々をフィーチャーし、トラックのほとんどをJay Dee(J Dilla)が手掛けている。The RootsのQuestloveが全体のプロデュースを務めた本作は時にはファンキーに、時にはジャジーに揺れつつ、総体とし…

Califone『Sometimes Good Weather Follows Bad People』(Glitterhouse)

Red Red Meatを前身とするシカゴのバンドが1998~2000年にリリースしたEPをまとめた編集盤。サイケデリックで浮遊感のある……あえて呼ぶならば「音響フォーク」。ゴツゴツとした手触りすら感じられるほどの生々しいサウンドと、ダブ処理された浮遊感のあるサ…

Broadcast『The Noise Made by People』(Warp)

イギリスのバンドのデビュー作。バンドサウンドに古めかしい意匠のエレクトロニクスをまぶした、幻想的でノスタルジックなドリームポップ。あえてホコリを被せたままにした綺麗すぎないサウンドには人肌の温かみがあり、聴き手に郷愁を呼び起こす。楽曲はヴ…

The Avalanches『Since I Left You』(Sire/Modular)

オーストラリアのグループのデビュー作。1000を超す膨大な数のサンプリングで作られた、ポップとダンスミュージックを巡る一大絵巻。小さなパーツを精緻に組み合わせて作られた作品は巨大なモザイク画のように、ミクロからマクロまで自由な距離感で楽しむこ…

Ariel Pink's Haunted Graffiti『The Doldrums』(Demonstration Bootleg)

アメリカのアーティストの初期作品のひとつ。正直00年代のどの作品を選んでも良いのだが、作品の最初の音の衝撃から本作をチョイス。過度にローファイな音像はメジャーフィールドの整ったサウンドに慣れた聴き手には衝撃的だろう。ひとつひとつのフレーズは…

Aimee Mann『Bachelor No. 2 or, the Last Remains of the Dodo』(SuperEgo, V2)

アメリカのSSWの3rd。歌心のあるソングライティングが冴えわたる、ポップなバラード集。作曲はもちろん、Jon Brionを筆頭に多数のスタッフが関わったアレンジ/プロダクションも完璧だ。グランジ通過後の歪んだギターが主張するサウンドこそ大文字のロックだ…