2010年代の200枚

Weyes Blood『Titanic Rising』(Sub Pop)

アメリカのSSWによるレーベル移籍後初となる4th。映画にもなったタイタニック号の沈没をモチーフに作られた、豪華でファンタジックなチェンバー・ポップ。かなり複雑なコード進行を軽やかに聴かせる充実のソングライティング。暖かみのある音色のストリング…

Thom Yorke『Anima』(XL Recordings)

イギリスのバンドRadioheadのフロントマンのソロ3rd。身体性と構築美を備えたダイナミックなエレクトロニック・ミュージック。『The King Of Limbs』に通じるミニマルなビートを基礎に、ミステリアスなコードで楽曲を展開していく。ゆっくり時間をかけてビル…

Moodymann『SINNER』(KDJ)

デトロイトのDJ/プロデューサーによる2018年作。黒さにあふれたソウルフルなディープ・ハウス。冒頭の「I'll Provide」が典型だが印象的なコードを巧みに使って緊張感を維持することに成功している。今まで以上に親密な空気があり、特に「Downtown」~「Deep…

Helado Negro『This Is How You Smile』(Rvng Intl.)

エクアドル移民のルーツを持つアメリカのSSWによる6th。ややトロピカルなムードのある内省的なフォーク作品。英語とスペイン語の入り混じるボーカルにはエキゾチックな味わいがあるし、マリンバやスティール・パンといった楽器が牧歌的な空気を醸し出してい…

折坂悠太『ざわめき』(ORISAKAYUTA)

日本のSSWの2ndミニアルバム。オーガニックでフレッシュなサウンドで奏でられる伝統的な歌謡曲。一聴すると清楚で素朴な印象ながらも、その実圧倒的な表現力を持つ歌唱がすばらしい。特大声量のボーカルから繰り出されるコブシの効いた独特の節回しには深い…

小袋成彬『分離派の夏』(Epic Records Japan)

日本のSSW/プロデューサーのデビュー作。内省的で現代的なR&B。自在な節回しの自由闊達なボーカル(高音部における表現力がすさまじい)と繊細かつ劇的なソングライティングが魅力で、思わずアメリカにはFrank Oceanがいるが日本には小袋成彬がいる(ロンド…

Stephen Malkmus and The Jicks『Sparkle Hard』(Matador)

元Pavementのフロントマン率いるバンドの2018年作。バンド・アンサンブルもストリングスなどのアレンジもビシッと決まった豊かなロック。「Future Suite」や「Refute」といった入り組んだ楽曲を、そうとは感じさせずにサラッと弾きこなすさまがカッコいい。…

Skee Mask『Compro』(Ilian Tape)

ドイツのDJ/プロデューサーによる2nd。霧のようなアンビエンスをまとった勢いのあるエレクトロニック・ミュージック。本作を構成する要素はIDMにジャングル、アンビエントにブレイクビーツ…という、90年代を彷彿とさせる伝統的なものばかりなのだが、それら…

Sarah Davachi『Let Night Come On Bells End The Day』(Recital)

非常に創作ペースの早いカナダのアーティストによる2018年作。メロトロンと電子オルガンによる柔らかなドローンとバロック音楽を組み合わせたアンビエント。オルガンの音色や少し籠った音響は教会のスピリチュアルで荘厳なイメージに繋がる。根底にあるのはÉ…

Pendant『Make Me Know You Sweet』(West Mineral Ltd.)

Huerco S.の名義で知られるアメリカのプロデューサーが新たに立ち上げたレーベルから名義を変えてリリースした作品。ダブ由来のズブズブな音響の中で奇妙な効果音が渦を巻く。基本、メロディーはなく、煙のような掴み切れない音の塊に包まれるのみなのだが、…

Noname『Room 25』(self-released)

シカゴ出身のラッパー/プロデューサーによるデビュー・スタジオアルバム。穏やかなムードのトラックに口語調の滑らかなフロウが乗るヒップホップ。サウンドはより生音志向になりリッチな響きに。抑制されたテンションによる洗練された表現が光る。脅迫的・圧…

Meitei/冥丁『Kwaidan/怪談』(Evening Chants)

広島で活動するアーティストのデビュー作。「失われた日本の雰囲気」へとフォーカスした幽玄なエレクトロニカ/アンビエント。空気感を大事にした繊細なエレクトロニカに日本の古い怪談を読み上げる音声が乗る。音声は淡々としたもので過度にエモーショナルに…

Kanye West『ye』(Def Jam Recordings)

アメリカのラッパー/プロデューサーによる8th。ジャケットに書かれた「I hate being Bi-Polar, it’s awesome(躁鬱でいるのは辛く、最高だ)」という文言が示すように分裂的な側面の現れた作品。アルバムは殺伐とした前半とソウルフルで祝祭的な後半(#4~)…

emamouse ✕ yeongrak『Mouth Mouse Maus』(Quantum Natives)

emamouseという日本のアーティストとyeongrakというニュージーランドのトラックメーカー?によるコラボ作。トラックはなんとも形容し難い…バイオハザードのゾンビのようなグロテスクな印象のあるアバンギャルドなものなのだが、そこに乗っかるメロディーには…

Earl Sweatshirt『Some Rap Songs』(Columbia)

OFWGKTAのメンバーでもあるラッパー/プロデューサーによる3rd。MadlibやJ Dillaに影響を受けたラフでヨレたビートが特徴のヒップホップ。トラックの持つ独特のグルーヴがすさまじく、集中して聴いていると悪酔いしそうになってくるため、どちらかといえばラ…

DJ Bus Replacement Service『いろんなDJMix』

イギリスのDoris Wooという人物(あのSurgeonの妻でもある)のDJ名義であり、オリジナルの楽曲は(おそらく)作っていないのだが、そのDJスタイルがあまりに個性的なので取り上げる。全てのギグで北朝鮮の最高指導者・金正恩のコスチュームを身に着けるとい…

AOTQ『e​-​muzak』(Local Visions)

今もっとも勢いのある島根のネット・レーベル「Local Visions」のカタログ・ナンバー1を飾る、謎の日本人?による(おそらく)デビュー作。「muzak」というワードが示すように機能的なヴァーチャル・ラウンジ・ミュージック。全ての曲が切れ目なく繋がってお…

AIKATSU☆STARS!『BRILLIANT☆STARS、STARS☆SHOWER』(Lantis)

日本のアーケードゲームおよびアニメ作品である『アイカツスターズ!』の楽曲をまとめたベストアルバム。MONACAが音楽を担当した前シリーズに引き続きエレクトロニックな質感のサウンドが特徴。おすすめ曲を挙げていきます…。「みつばちのキス」フレッシュな…

VRTUA『LOUD FORMATIONS』(Beer On The Rug)

アメリカはデンバーを拠点に活動するBobby Spiecherのソロ・ユニットによるデビュー作。セガのメガドライブの音源を使用したビビッドなサウンドが特徴の機能的なエレクトロニカ。序盤の数曲では昔のゲームにおけるバグ的な現象が音で表現されており耳を引く…

Visible Cloaks『Reassemblage』(Rvng Intl.)

ポートランドのデュオによる2nd。音色はOPN『R Plus Seven』、James Ferraro『Far Side Virtual』に通じる人工的で潔癖なもので、楽曲も『R Plus~』に近い抽象的なものなのだが、こちらはよりオリエンタルな空気がある。メンバーのSpencer Doranはかつて『F…

Tyler, The Creator『Scum Fuck Flower Boy』(Columbia)

OFWGKTAの首魁による4th。内省的なトーンでまとめられたヒップホップ。アルバムのリード・シングルとなった「911 / Mr. Lonely」が象徴するように「孤独」がテーマの一つで、全編にメロウなムードが漂っている。個人的にはどこか寂し気な曲調で退屈について…

Toiret Status『Nyoi Plunger』(Noumenal Loom)

日本の山口県在住のIsamu Yorichikaによるユニットの2017年作。エクスペリメンタルで反射神経の良いエレクトロニック・ミュージック。奔放なリズムに乗ってコミカルでキュートな音が連鎖していくさまは、例えるなら「音のピタゴラスイッチ」。予測不可能性が…

Standing On The Corner『RED BURNS』(self-released)

ブルックリンを拠点に活動するジャズ~ヒップホップグループの2nd。約1時間で36曲もの短い曲が流れていくコラージュ的な作品。AメロBメロサビ~といったポップスの形式に囚われない自由で気ままなイメージのアルバムで、雰囲気のある印象的なフレーズが思い…

Machine Girl『.​.​.​BECAUSE IM YOUNG ARROGANT AND HATE EVERYTHING YOU STAND FOR』(Orange Milk)

ニューヨークを拠点とするMatt Stephensonによるプロジェクトの2017年作。異常なテンションのブレイクコア。デジタルなサウンドはDeath Gripsを思わせるが楽曲はあちらよりもテンポが速く、より躁的である。ジャケットからも読み取れるが内容もゲームから影…

Lily Konigsberg & Andrea Schiavelli『Good Time Now』(Ramp Local)

ニューヨークで活動する二人のアーティストの連名名義の作品で、それぞれの手による楽曲が交互に配置されている。Konigsbergの提供曲には彼女の属する別のユニット(Lily and Horn Horse)での相棒であるMatt Normanによってホーンが高らかに響くバロック・…

Lee Gamble『Mnestic Pressure』(Hyperdub)

ロンドンを拠点に活動するDJ/プロデューサーの2017年作。現代的で折衷的なエレクトロニック・ミュージックで、正直あまり言語化できていない。Actressのような掴めなさ・(影響元の多さからくる)闇鍋感があるがあそこまで抽象的ではなく……実際サウンド的に…

King Gizzard And The Lizard Wizard with Mild High Club『Sketches Of Brunswick East』(Flightless)

超ハイペースで活動を続けるオーストラリアのバンドとLAのSSW/マルチ・プレイヤーによる共作。ビンテージな音色がきらめくジャジーなサイケデリック・ロック。まるで70年代にタイムスリップしたかのようなサウンドに驚く。陰影のある複雑な展開を滑らかに、…

Khotin『New Tab』(self-released)

カナダ出身のアーティストの2nd。純粋な音の響きと環境音的な軽やかな音遣いにフォーカスしたアンビエント。作曲の比重は高くなく、ただぼや~っと音が鳴らされているだけとも言えるのだが、それだけでも十分に気持ちいいという音色の作り込みがすばらしい。…

Jonny Nash & Suzanne Kraft『Passive Aggressive』(Melody As Truth)

オランダを拠点として活動する二人のアーティストのコラボ作。柔らかな音色がゆっくりと漂うアンビエント。牧歌的な音色のシンセやピアノ、ウッドベースがゆったりと空間を埋めていく。全体の空気感・時間間隔は『Music For Airports』と地続きの王道なもの…

Fleet Foxes『Crack-Up』(Nonesuch)

シアトルを拠点に活動するバンドの3rd。厳かな響きのあるフォーク・ロック。静と動を自在に行き来するダイナミックな楽曲はGrizzly Bear『Veckatimest』を彷彿とさせる。全体的にシリアスなムードの中でボーカルのメロディーの朗らかさ・ハーモニーの美しさ…