Animal Collective『Merriweather Post Pavilion』(Domino)

アメリカのバンドの8作目。妖精のような音楽を奏でていたバンドは2005年の『Feels』から次第にその音楽を「型枠」に嵌めるようになったが、その型枠を作る技術も作を追うごとに向上し、そしてひとつの頂点に達したのが本作だ。つまりソングライティングやアレンジといった要素が過去最高の充実を見せており、それはDirty ProjectorsやGrizzly Bearの同年作——00年代の最高峰の作品群と(方向性は違えど)同じ高みにある。しかし本作のユニークな点はその芸術性の高さではなく、よりマスに訴えるアンセミックな側面をも兼ね備えている点だ。「Daily Routine」や「Lion in a Coma」のような実験的で入り組んだ(しかしエモーショナルな)楽曲から「Summertime Clothes」や「Bluish」という特大射程のポップソングまでを擁するアルバムはベッドルームからスタジアムまで幅広い場所・状況で親しまれることだろう。エレクトリックでダビーなサウンドの過剰さは相変わらずだが、それも楽曲のエモさを増すように整理・方向付けされている。…すごく褒めてますが、実際、少年時代のキラキラとした憧憬をここまで見事に昇華させた音楽は他にないと思うのだ。他メディアの評判は無視して、一度フラットな状態で聴いてみることを勧めます。