Vektroidの変名によるリリースで、ヴェイパーウェイヴというジャンルの代表作のひとつ。Midnight Television同様に短いループを繰り返す小曲の連続で成り立っているが、ムード&懐古の方向性(というかサンプリング元)はやや異なり、あちらが深夜のテレビならこちらはビデオゲームといった具合。メロディアスかつサウンドがクリアーで、悪ふざけ的な気持ち悪い音がないためにジャンルの中でも聴きやすい作品となっている。#21「Data Dream」はその後の「花の専門店」やOPN「Sleep Dealer」に繋がる、ループをピッチを変えて繰り返すことでポップさを演出する名曲。フィジカル版では音源全体にうっすらと日本のテレビCMの音が重ね合わされている(曲間の無音部分が分かりやすい)。雰囲気の猥雑感・卑近感が増し、かなり印象が変わるので一度聴き比べてみるといい。Midnight Televisionにしろ今作にしろ、よくこのサウンド・雰囲気にピンポイントでフォーカスできたなと思うが、大きな目で見ればどちらも懐古の一環のようにも思え、そういう意味ではいずれは誰かがやっただろうなとか。いずれにせよ、ヴェイパーウェイヴの基本的なスタイルと大まかなコンセプトの方向性はこの2作によって決定づけられたように思う。