Mediafired™『The Pathway Through Whatever』(Beer On The Rug)

ポルトガルのExo Tapesから2011年にリリースされていたもののリイシュー。ヴェイパーウェイヴ初期の作品の中ではサンプリングの元ネタが圧倒的に有名であり、それゆえにヴェイパーウェイヴ、というよりはEccojamsという手法が広く認知されたきっかけとなった。しかし構築的な『Floral Shoppe』とは対照的にこちらは非常にループが乱雑で……というかそもそも切り取られたループ部分がそこまで気持ちよくない(主観ではありますが)。どちらかといえば░▒▓新しいデラックスライフ▓▒░のような幻惑的でデッドな聴き心地で、喚起されるのも陶酔ではなく悪酔いの感覚だ。違法なファイル共有によく利用されたオンラインストレージサービス「MediaFire」をもじった名義と同様に、音楽性においても快感より悪ふざけが先行しているように感じられる。リイシューの経緯はわからないが、ただこの作品がレーベルのラインナップに加わったことによってヴェイパーウェイヴという新しく奇妙なトレンドが勢いを増したことは確実だ。個人的な好みからは外れるが、今作もまたヴェイパーウェイヴというジャンルにおけるモニュメンタルなリリースの一つである。