PrismCorp Virtual Enterprises『ClearSkies™ & Home™』(Beer On The Rug)

VektroidのBOTRからの最終作で、二枚同時にリリースされた。テーマは往年のMIDI音源。『ClearSkies™』にはヤマハ謹製のMIDI音源が、『Home™』ではそれに加えてGeoCitiesRolandMIDI音源に、既存のポップスのMIDIカバーが収録されている。ヤマハの楽曲はキーボード商品にデモ用としてプリセットされていたもので、それらの商品に触れたことのある人なら聴いたことがあるかもしれない(本作ではいくらか再生速度が下げられているが)。そこまで音楽に馴染みのなかった人にとっては、そうした商品は楽器屋や学校の音楽室はもとより、電気屋さんやジャスコなどの大型のショッピングモールで見かけることが多かったのではないかと思う。そういう意味ではモールソフト的な側面も本作にはあるのかもしれない。『Home™』での小田和正やTUBEのカバーもあり、両作ともに日本人にとってはかなりノスタルジックに響くところがある(外国人にとってどう聴こえるのかは謎)。『札幌コンテンポラリー』よりもさらに加工・編集が少なく、オリジナルアルバムというよりは特定のテーマに沿って作られた架空のコンピレーションのようなイメージが強い。本当に無害な音楽でなにか強いひっかかりがあるわけでもないのだが、独特なネタを探し出すセンスには毎度感心させられる。