2024-01-22から1日間の記事一覧

Aphex Twin『Syro』(Warp)

イギリスのミュージシャンによる13年ぶりの新作。革新的な表現はないが、盛りすぎでない、洗練されたアレンジで楽曲をきちんと聴かせる作品になっており、ソングライティングの充実度で言えばキャリアベストと言えるアルバムとなっている。アナログ機材にこ…

Angel 1『"Allegra Bin 1"』(1080p)

ロサンゼルスを拠点とするプロデューサーの2014年作。実験的な感性でIDMとアンビエントの境界を行き来するエレクトロニック・ミュージック。音数は少ないが楽曲は複雑。展開は非常に練られており、盛り上がりも用意されているので繰り返し視聴することで本作…

青葉市子『0』(Speedstar Records)

日本のSSWによるメジャーデビュー作となる4th。クラシックギターによる弾き語りで、シンプルなスタイルゆえに表現力の高さやソングライティングの良さが引き立つ。凛とした透き通った声は部屋の空気も聴き手の精神もシャキッとさせるようだ。七尾旅人の3rdの…

Various『THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS+ GRE@TEST BEST!』(日本コロムビア)

今や巨大コンテンツへと成長した「THE IDOLM@STER」シリーズの、ゲーム・アニメから代表曲を網羅・収録したベストアルバムシリーズ。計4作出ており、それぞれ「SWEET&SMILE!」などのコンセプトに沿って楽曲がまとめられている。音楽性は多岐にわたるためこ…

Various『The Early Emissions』(EPs 1-4)』(Firecracker Recordings)

スコットランドのエジンバラ発のレーベルによる、2004~2009年に発表された初期EPをまとめたコンピレーション。デトロイトに通じる「黒さ」を持ったビートダウン・ハウス。ディスコやジャズ、ソウルなどのブラック・ミュージックを広く取り込んだ、豊かな音…

Various『Livity Sound』(Livity Sound)

Peverelist、Kowton、Asusuによって運営されているブリストルのレーベル「Livity Sound」の、2011~2013年に発表された楽曲をまとめたコンピレーション。シンプルで力強いテクノで、音数はミニマルと呼べるほどに絞られているが代わりに一音一音が迫力を持っ…

Vampire Weekend『Modern Vampires of the City』(XL Recordings)

ニューヨーク出身のバンドの3rd。テンポはスローに、音域は中低域に、音色はシックで落ち着いたものにそれぞれ変化し、今までで一番穏やかに聴かせる作品となった。それまでも室内楽的な、いわゆるチェンバー・ポップな楽曲はあったが、「Step」を筆頭に今作…

Stellar OM Source『Joy One Mile』(Rvng Intl.)

アナログ・シンセによるニューエイジ~アンビエントな作品を発表していた女性アーティスト、Christelle Gualdiによる2013年作。高密度でエクストリームなテクノ。細かい音が集まってメロディーラインが生み出されていく様子は点描的とも言える。一音一音ベロ…

RP Boo『Legacy』(Planet Mu)

ジューク/フットワークというジャンルのオリジネイターの一人と目されるシカゴ出身のプロデューサーの1st。リズムに特化したジャンルの中でも特にリズムに凝った作品で、聴くとリズムには進化する余地がまだこんなにあったのか、と驚かされる。最先端のダン…

Oneohtrix Point Never『R Plus Seven』(Warp)

レーベル移籍後の6th。ソフト・シンセによる人工的でハイファイな音色が特徴的なエレクトロニック・ミュージック。滑らかなサウンドとしばしば顔を出す教会音楽風のハーモニーが美しいイメージを作り出す。メロディーはあるがポップ・ソング的な繰り返しはな…

My Bloody Valentine『m b v』(MBV Records)

アイルランド出身のバンドによる22年(!)ぶりの新作。基本的な音楽性は変わっていないが、そもそも前作『Loveless』と同レベルの楽曲・サウンドを再び作れたこと自体が偉業である。アナログな手法にこだわって作られたサウンドは「マイブラ節」としか言い…

Maxo『LEVEL MUSIC PURCHASE』(self-released)

アーティストがニューヨーク州立大学パーチェス校に在籍中に手掛けた作品で、同校のキャンパスがもしゲームだったら…という設定で作られており、各楽曲はキャンパス内の場所(と時間)に対応している。リズムとコード進行に凝った楽曲は高密度で機能的。スー…

Logos『Cold Mission』(Keysound)

イギリスのプロデューサーのデビューアルバム。無音部分を大胆に配置することでリズムを最大限に強調したグライム。Jam Cityの11年作におけるグライムの骨格だけを抜き出したようなサウンドに、無重力空間を連想させる冷たいアンビエンスと無音を加えさらに…

Lil Ugly Mane『Three Sided Tape [Volumes One]』(self-released)

多くの名義を使い大量の作品を発表しているTravis Millerの、Lil Ugly Mane名義による未発表曲やインストゥルメンタルをまとめたミックステープ。様々なタイプの楽曲が無造作に(ぶつ切りで)繋がれていくさまは分裂症的な不気味さがあるが、困ったことにど…

KMFH『The Boat Party』(Wild Oats)

デトロイト出身のDJ/プロデューサーのデビュー作。リズムを前面に押し出したラフな音色のマシン・ファンク。メロディーやコードといったものはほとんどなく、代わりにリズムと、目の前でツマミを回しているかのような生々しいエフェクト操作で展開を作ってい…

Jon Hopkins『Immunity』(domino)

Brian Enoとの関わりの深いプロデューサーによる4th。アンビエントに通じる空間的な音響とクリック/グリッチ通過後の緻密な打ち込みが自然に融合したスケールの大きなテクノ。アルバムは前半が猛烈で雄大なテクノ、後半が夜空を揺蕩うようなアンビエントと明…

Jessy Lanza『Pull My Hair Back』(Hyperdub)

カナダ出身のSSWによるデビュー作。セクシーさと神秘性をあわせ持つボーカルが魅力的なR&B。同郷であるJunior BoysのJeremy Greenspanがプロデューサーとして製作に参加しており、サウンドもそれに連なるミニマルで滑らかなものになっている。終盤3曲の内省…

Jerry Paper『Fuzzy Logic』(Digitalis Limited)

Orange MilkやHausu Mountain、近年はStones Throwなど多くのレーベルを渡り歩くアメリカのSSW、Lucas Nathanの2nd。ふわふわというよりはへなへななシンセ・サウンドがトレードマークのベッドルーム・ポップ。楽曲の構成はかっちりとしていて地味にリズムも…

James Holden『The Inheritors』(Border Community)

イギリスのDJ/プロデューサーによる7年ぶり2nd。モジュラー・シンセによる荒々しく破壊的なサウンドが特徴のプリミティブなテクノ。60~70年代の混沌と恍惚が同居したクラウトロックを彷彿とさせる楽曲群はまさしく型破りなパワーに満ちている。いくつかの曲…

HAPPLE『ドラマは続く』(マインズ・レコード)

ロックバンド・いなかやろうのメンバーによって結成された三人組バンドの1st。ユニコーンや小沢健二、果てはXTCやTodd Rundgrenとも比較される土岐佳裕のソングライティングがすばらしい。バンドによるアレンジもキュートなフックがいっぱいで、一度聴けば耳…

Galcher Lustwerk『100% Galcher』(Blowing Up The Workshop)

Blowing Up The Workshopという実験的なミックステープ・プロジェクトに提供された、自作曲のみで構成されたミックス作品。靄がかかったような上モノが特徴的といえば特徴的だが、それ以外の要素は非常にシンプルなハウス。シンプルなものの組み合わせでここ…

DJ Sprinkles『Where Dancefloors Stand Still』(Mule Musiq)

「ダンスフロアが凍てつくとき」と題された、日本の風営法改正へのリアクションの意味も込めたDJミックス作品。黄金期のディープ・ハウスを用いたウォーミーで多幸感あふれる作品で、特に#8「Forestfunk I』(No Damkkb Mix)」から始まる優しさと恍惚に満ちた…

DJ Sprinkles『Queerifications & Ruins: Collected Remixes By DJ Sprinkles』(Mule Musiq)

アメリカ出身日本在住のマルチメディアプロデューサー、Terre Thaemlitzのハウス名義によるリミックス集。弾性のあるベースと柔らかなパッドが耳を惹く、王道のディープ・ハウス…なのだけど、とにかく楽曲のスケールが大きい。長尺だが緩急の効いた展開で聴…

DJ Rashad『Double Cup』(Hyperdub)

シカゴを拠点としていたDJ/プロデューサーによる1st。ジューク/フットワークという、シカゴ発祥の高速のリズムに特化したダンス・ミュージック。イギリスのPlanet Muによるコンピ『Bangs & Works』で聴けたような荒々しさ・ストリート感は抑えられ、代わりに…

DJ Koze『Amygdala』(Pampa)

ドイツ出身のDJ/プロデューサーが自身のレーベルから出した2nd。ファットで柔らかな音遣いと多用されるボーカルが人肌の温かみを感じさせるポップなハウス。(おそらく)本人によるボーカルを始めとしたユーモラスな音がそこかしこで見られるが楽曲の展開は…

Deep Magic『Reflections Of Most Forgotten Love』(Preservation)

上述したAlexander Grayの、アンビエント志向の名義で発表された作品。今作では住まいを共にしていたらしいSean McCannとMatthew Sullivanに影響を受けたミュージック・コンクレートを展開している。楽曲は抽象的だがムードはポジティブで、(感覚的なもの言…

D/P/I『Fresh Roses』(CHANCEIMAG.es)

Sun ArawやPocahauntedのライブにサポートで参加したりもしている、LAを拠点に活動しているプロデューサーのAlexander Grayによる作品。雑多なサンプリング・コラージュにコロコロとした電子音をまぶしたサウンドは(全体に音域が高めなこともあると思うが)…

Chance The Rapper『Acid Rap』(self-released)

シカゴ出身のラッパーによる2作目のミックステープ。ドラム・ベースを差し置いて最前面に出てくるのがキーボードで、AORや教会音楽を連想させるその音色は都会的・祝祭的なイメージを作品に加えているのだが、そこにチャンスの粗野な(ソウルフルとも言える…

Boards of Canada『Tomorrow's Harvest』(Warp)

スコットランド出身のデュオによる8年ぶり4th。以前と比べて音数は少なく、テンポはゆっくりになり、音色も彩度の低い落ち着いたものとなった。結果、サウンドの快楽性と引き換えに臨場感・没入感が高まり、まるで長尺のSF映画のサウンドトラックのような印…

bo en『pale machine』(Maltine)

本名名義でゲーム音楽も製作しているロンドン出身のプロデューサー、Calum Bowenの1st。コード進行とリズムに凝ったマルチネらしいカラフルなポップで、チャイルディッシュかつどこかノスタルジックなメロディーが涙を誘う。日本語と英語が自然に同居する素…