Suryummy『Genesis Clarity』『Photon Slobber』(Beer On The Rug)

音楽性が似通っているため2017年の次作も一緒に取り上げる。サンフランシスコのデザイナー・アニメーター・ミュージシャン…多才なアーティストのEmmett Feldman。Graham Kartnaと同じく映像分野でも活躍しており、2021年のデモリール*1によればプロジェクションマッピングなど実際の構造物と映像を組み合わせるディレクターとしての仕事も多い。概して、映像と音など複数の分野を組み合わせた総合的な体験の創造にフォーカスしている印象だ。おそらく自作であろう、未来的でかっこいいアートワークのこの二作でもどちらかと言えば体験型の音楽が展開されている。スタイルとしてはニューエイジエレクトロニカの中間だが、とにもかくにもプロダクションが整っている。錯覚とは分かっているのだが、家のスピーカーで聴いていてもまるで映画館などの音響設備が整った環境で聴いているかのような感じがするのだ。そういう意味で言えば近いのはJon Hopkinsのようなアーティストだろう。音楽性はポップの中毒性にもダンスのフィジカルにも寄りすぎることなく……なんというか、心地よさと「デザイン的な」良さを求めて作られているように感じる。音楽だけで完結する作品じゃないような気もする(BGM的に耳を滑る感じが多少ある)が、これはアーティストの個性かもしれない。なんにせよ、商業レベルの超高品質なサウンドデザインが堪能できる傑作だ。

*1 https://vimeo.com/604474861