M.I.A.『Kala』(XL)

ロンドンで生まれスリランカで育ったアーティストの2ndで、ビザが取得できなかったためにインドやジャマイカなど様々な場所で録音されている。SwitchをメインにDiploやTimbalandなどのプロデューサーと共に製作された極彩色のポップ(としか形容できない)。リオデジャネイロのバイレファンキを筆頭に南アジアやアフリカの民族音楽など多様なスタイルを取り込んだ音楽からはそれまでのポップスの流れから逸脱したミュータントのような印象を受ける。ダイナミックなリズムに乗せて、ボリウッド映画からも拝借したという破天荒なサンプルが連発される様子は騒々しいがエネルギッシュで非常に刺激的だ。歌詞は攻撃的なサウンドと同調するように政治的な領域にも果敢に踏み込んでいく(彼女が幅広い層から評価されている理由の一つだろう)。サウンドの新規性ではDizzee Rascalに並び、歌詞の力強さではPublic Enemyに匹敵する、00年代でも屈指の強力な作品だ。