2024-01-26から1日間の記事一覧

Vampire Weekend『Vampire Weekend』(XL)

ニューヨークのバンドのデビュー作。アフロポップとチェンバーポップの明るく楽しいハイブリッド。華やかな管弦にキュートな音色のシンセを組み合わせたサウンドは軽やかでファニー。バンドの演奏は小気味よく、フィジカルな快感にあふれている。楽曲からは…

Times New Viking『Rip It Off』(Matador)

アメリカのバンドの3rd。Lightning Boltばりの騒音が特徴のノイズポップ。“ローファイの美学”と呼ぶには乱雑すぎるサウンドで、普通に聴くとうるさすぎるのでボリュームを下げて聴くことになる(野外ライブをずっと遠くから聴いているような感じになる)。楽…

Theo Parrish『Sound Sculptures Volume 1』(Sound Signature)

デトロイトを拠点として活動するDJ/プロデューサーの3rdで、CD版は前年にアナログ3枚組でリリースされたものの拡張版と言える。ラフな質感のシカゴハウスをベースにジャズやソウル、ファンクやヒップホップなどを吞み込んだもの。しかしアブストラクトなとこ…

Portishead『Third』(Island)

イギリスのバンドの11年ぶり3作目。ダークな雰囲気のエクスペリメンタルなロック。不協和音、非同期なリズム、ぶつ切りにされたサンプリング、耳障りなエレクトロニクスなど、乱雑で攻撃的な音楽性を持つ。それは聴き手に寄り添った、整った音楽に触れてきた…

Ponytail『Ice Cream Spiritual』(We Are Free)

アメリカのバンドの2nd。高速で暴れまわるバンドサウンドが気持ちいいエクストリームなロック。もともとのテンポが速いのに加えて16分32分が普通に出てくるため演奏は半ば痙攣のようになっているのだが、それがまた良いんですよね(個人的なフェチ)。バンド…

No Age『Nouns』(Sub Pop)

アメリカのギターとドラムのデュオの2nd。Lightning Boltのような編成で、ローファイで迫力のある録音と勢いのある演奏と、音楽性にも似たところがあるが、こちらはより単純明快なパンクを展開している。それもとびきりにポップで洗練されたパンクだ。ボーカ…

Move D & Benjamin Brunn『Songs from the Beehive』(Smallville)

ドイツのプロデューサー二人のタッグによる2作目。ダブテクノとアンビエントの中間を突くディープなハウス。Resident Advisorが「Arthropod-house(節足動物ハウス)」と形容したのも頷ける、まるで生きているかのように緩く変化し続けるトラックが特徴で、…

Lone『Lemurian』(Dealmaker)

イギリスのプロデューサーの2nd。崩壊しかけのブレイクビーツに蜃気楼のようにぼやけた電子音が乗る。彼にとってのヒーローであるBoards of Canadaからの影響が色濃い作品で、その音楽性は率直に言えば「Dayvan Cowboy」で見せた明るく爽やかな方向性を推し…

Kanye West『808s & Heartbreak』(Roc-A-Fella)

アメリカのアーティストの4作目。母親の死と婚約者との別れから影響を受けたセンチメンタルなヒップホップ~R&B。アルバムタイトルにも使われたリズムマシンTR-808を中心に据えたクールでミニマルなサウンドにオートチューンを施したボーカルが乗る。ラップ…

Hercules and Love Affair『Hercules and Love Affair』(DFA/EMI)

Andrew Butlerのプロジェクトかつ彼を中心とするバンドのデビュー作。カラフルで洗練された高品質なハウス~ディスコ。ButlerとDFAの経験豊かなTim Goldsworthyがプロデュースするサウンドはフィジカルな快感と緻密さ・奥深さが両立しており、クラブでのプレ…

Grouper『Dragging A Dead Deer Up A Hill』(Type)

アメリカのアーティストの5作目。空間系のエフェクトを重ねることで靄のようなアンビエンスを備えたアシッドフォーク。この世のものとは思えないような幽玄な響きが、素朴な楽曲に底知れなさと妖しさ、そして神秘性を加えている。アルバムには背筋が凍るよう…

Gang Gang Dance『Saint Dymphna』(The Social Registry)

ニューヨークを拠点とするバンドの4作目。様々なジャンルを取り込み煮詰めたエクスペリメンタルなロック。闇鍋的とも言うべきスタイルはサウンドのみならず楽曲構造にまで及んでいる。しかし聴きにくいかというとそんなことはなく、4分前後に統一された尺と…

Fucked Up『The Chemistry Of Common Life』(Matador)

カナダのバンドの2nd。過剰すぎるサウンドが特徴の、衝撃的で熱狂的なハードコア・パンク。ハードコアと聞くと鋭く引き締まったサウンド・演奏を想像するが、今作では速さや攻撃性を残しつつ、シューゲイザーのような分厚いサウンドが追究されている。その方…

Flying Lotus『Los Angeles』(Warp)

レーベルBrainfeederの創設者でもあるアメリカのプロデューサーの2nd。J Dillaの生々しく揺れるビートを下敷きに、スペーシーでサイケデリックなサウンドを散りばめたエレクトロニカ~ヒップホップ。ゲーム音楽に影響を受けたキャッチーな音色・フレーズが飛…

Fleet Foxes『Fleet Foxes』(Sub Pop)

Robin Pecknoldを中心とするアメリカのバンドのデビュー作。My Morning Jacketに通じる広がりを感じさせる音響と深い響きのボーカルが特徴の牧歌的なロック。牧歌的だが泥臭さを感じないのはボーカルハーモニーの神秘的な美しさのせいか。アパラチアン・フォ…

DJ /rupture『Uproot』(theAgriculture)

ニューヨークを拠点とするDJ/プロデューサーのDJミックス作品。ダブステップとアンビエント、ラガあるいはダンスホールレゲエを混ぜ合わせた本作は奇妙でユニークなムードを身に纏っている。テンポは比較的ゆっくり目でビートもそれほど強くなく、聴き手を踊…

Deerhunter『Microcastle』(Kranky/4AD)

アトランタのバンドの3rd。前作『Cryptograms』の後半で提示されたサイケデリックポップをベースに、より幽玄に、よりポップになっている。中盤4曲のゴーストリーな音響は今聴いても新鮮だ。それまでよりもエフェクトの使用が抑えられた結果、楽曲の骨格がく…

Cut Copy『In Ghost Colours』(Modular)

オーストラリアのバンドの2nd。カラフルなエレクトロとバンドサウンドを組み合わせた、爽やかなエレポップ。DFAのTim Goldsworthyがプロデュースするサウンドはベッドルームとダンスフロアのちょうど中間を捉えている。サウンドに統一感があり全体の流れも良…

The Caretaker『Persistent Repetition of Phrases』(Install)

イギリスのアーティストのThe Caretaker名義での6作目。映画『シャイニング』に触発された、記憶とそれにまつわるムードを追究するプロジェクトは本作で新たな局面を迎えている。20世紀初頭の社交ダンスの音楽を加工する手法はそのままに、抽象的なノイズや…

Beach House『Devotion』(Bella Union/Carpark)

アメリカはボルチモアを拠点とする二人組の2nd。雪原で鳴らされているかのようなぼやけた音像が特徴のドリームポップ。1stで見せたヴェルヴェッツ直系の甘く退廃的なソングライティングはここでより複雑にドラマティックに進化している。#7「Heart of Chambe…

Actress『Hazyville』(Werk Discs)

レーベルWerk Discsの主催者であるアメリカのプロデューサーのデビュー作。ローファイな質感の、抽象的な電子音楽。強引にジャンルに括るのならばテクノになるだろうが、別段ダンスフロアを志向しているわけではない。彩度の低い、ダメージ加工の施されたサ…

Various Artists『After Dark』(Italians Do It Better)

アメリカのレーベルItalians Do It Betterの作品を紹介するコンピレーション。直球なレーベル名が示すようにイタロディスコから影響を受けたシンセポップ~ディスコが展開されている。レーベルの共同設立者でありChromaticsとGlass Candyの一員でもあるJohnny…

The Tough Alliance『A New Chance』(Sincerely Yours)

スウェーデンのデュオが2006年に立ち上げた自身のレーベルからリリースした3作目(最終作)。底抜けに明るくエネルギッシュなエレポップ。サウンドはややチープで人工感があるものの、照れや衒いのようなものが微塵もなく、突き抜けた勢いと多幸感がある(「…

Thomas Fehlmann『Honigpumpe』(Kompakt)

ドイツを拠点とし、Palais SchaumburgやThe Orbの一員としても活動していたアーティストのKompaktからの二作目。Joseph Beuysという芸術家へのオマージュ作品で、どこかユーフォリックな響きのあるテックハウス~ダブテクノ。ダブテクノと聞くと単調そう・敷…

Spoon『Ga Ga Ga Ga Ga』(Merge)

アメリカのバンドの6作目。オーセンティックな楽曲とモダンで実験的なプロダクションが互いを高めあうクールなロック。ヴィンテージで生々しい録音をベースに、時おり明らかに加工された音が紛れるサウンドには“異物感”があり、聴き手に強い印象を残す。#3「…

Ricardo Villalobos『Fabric 36』(Fabric)

チリ人DJ/プロデューサーが自身の新曲のみで構成したDJミックス作品。実質的なオリジナルアルバムであり、有名なシリーズを隠れ蓑にする(もしくはフリーライドだ)手法は賛否を呼んだが、こんな暴挙が許されるのも彼が築いた「変人」のレッテルのおかげか。…

Radiohead『In Rainbows』(Self-Released/XL)

イギリスのバンドの7作目。前作でEMIとの契約が切れたバンドが休暇を挟んでじっくりと作り上げたアルバムはかつてなく親密でパーソナルなものとなった。ストレートに抒情的な瞬間が多くあるのが特徴だ。のびのびと実験できた…かどうかはわからないが、作品は…

Pantha Du Prince『This Bliss』(Dial)

ドイツのプロデューサーの2nd。チャイムやマリンバを主体とした点描的なサウンドが特徴のユーフォリックなテクノ。点描的とはサウンドに持続的な部分(サステイン)が少ないということで、例としては雨の音なんかがわかりやすい。様々な定位で丸い音の粒が身…

Of Montreal『Hissing Fauna, Are You the Destroyer?』(Polyvinyl)

Kevin Barnesを中心とするアメリカのバンドの8作目。シンセポップのサウンドとグラムロックのパフォーマンスを組み合わせた、サイケデリックなポップ。60年代のポップスから影響を受けた楽曲はひたすらにキャッチーで馴染みやすいが、妻との不仲や鬱病が影響…

M.I.A.『Kala』(XL)

ロンドンで生まれスリランカで育ったアーティストの2ndで、ビザが取得できなかったためにインドやジャマイカなど様々な場所で録音されている。SwitchをメインにDiploやTimbalandなどのプロデューサーと共に製作された極彩色のポップ(としか形容できない)。…