Oneohtrix Point Never『Rifts』(No Fun Productions)

アメリカのアーティストの、1st~3rdを含む、キャリア初期の音源をまとめたコンピレーション。幻想的でイマジネイティブなアンビエントニューエイジ。ほぼシンセサイザーアルペジエーターのみを用いて作られた音楽にはストイック…というか無垢な響きがある。というのも、特定のジャンルからの明確な影響が見当たらないのだ。00年代~80年代までをすっ飛ばして、心の赴くままに宇宙的・瞑想的な音の響きを追究していた70年代の電子音楽作品群(初期Popol VuhやTerry Rileyなど)と似たような音楽性を備えている。あるいはより率直にSF映画サウンドトラック的と言ってもいい。シンプルで、浮遊感があり、聴き手の想像力を喚起する音楽だ。そして1作目『Betrayed in the Octagon』の2曲目「Behind the Bank」を聴けばわかるが、彼の抒情的なメロディーのセンスはこの時点で確立されている。様々な文脈がひしめく現代においてこのような純粋な音楽作品は貴重であり、ポップの記号の海に辟易した人に対しては一種の解毒剤のようにも機能するだろう。