Real Estate『Real Estate』(Woodsist)

アメリカのバンドのデビュー作。日に焼けて色褪せたサウンドで奏でられる穏やかなギターポップ。リヴァーブのかけられた柔らかなギターを中心としたアンサンブルにはいつまでも聴いていたくなるような心地よさがある。作品の一番の魅力は楽曲とサウンドが総体となって醸し出すレイドバックした雰囲気だ。それが一番強まるのが#2「Pool Swimmers」~#3「Suburban Dogs」の流れで……通常は軽快で明るいリードトラックを配置するのがセオリーと思われるアルバムの重要な位置に、このバンドは夏休みのモラトリアムを完璧に表現したアンニュイな楽曲を配置しているのだ。自信がなければできない大胆な所業だが、その試みは成功し、バンドは独自の立ち位置を確立する。バンドの演奏にはまだ洗練の余地があるが、ことサウンドの空気感に限って言えば今作、そして上述の2曲がいまだにバンドのピークであるように思う。そのぬるま湯の桃源郷はひたすらに甘く、抜け出すことは困難だ。