Angel 1『Rex』(Beer On The Rug)

1080pからの傑作『Allegra Bin 1』に続く作品。ときおり前作で聴かれたリフやフレーズが再登場するために続きものといったイメージが微妙にある。形式的な構造がほぼない、エクスペリメンタルな、というか支離滅裂なエレクトロニカ。説明的な…という表現もなんかアレだが、コードによる直接的なムードの醸成など、典型的でキャッチーな音遣いが少なく、展開も唐突で流れもなにもないために楽曲が掴みにくい。スタイルとして近いのはおそらくデコンストラクテッド・クラブで、Jam CityやArcaのようなサウンド・楽曲を作ろうとしたのでは、と勝手に思っている。 構造を感じさせない根本原因は「音を繋げない(レガートしない)」ことと「リズムを作らない」こと。言ってしまえばこれは「歌えないし踊れない音楽」だ。テンポはあるがアクセントはない。生理的な快感をとことんまで排除した音楽で、「こうしよう」という明確な意思がなければできない芸当だろう。そういう意味で大衆的なポップとは程遠いアート作品だ。個人的に伝統的な作曲は『Allegra~』で極まったと思っているので、この方向性の変化には納得はあるものの…。#4と他一部でギター主体のR&Bという伝統的なスタイルが出てくるが、「非構造」としてまとまることを拒否するための存在かと勘繰ったりする。