Autechre『Confield』(Warp)

イギリスのデュオの6作目。Max/MSPという、様々なアートに使われている統合開発環境/プログラミング言語を用いて製作された実験的な電子音楽。音楽はプログラムされた規則に従いリアルタイムで変化していく。この先進的な製作手法を象徴するものとしてオープニングの「VI Scose Poise」の冒頭から聴ける、痙攣しているかのような異様に細かい音がある。これは4分、8分、16分…というふうに音符を極限まで細かく割ったものなのだろう(ルールに則っているからこそリズム的に自然に聴こえる)。プログラムの力を借りることで伸縮自在な、まるで生きているかのようなビートが生み出されているのだ。なにやら難しそうな印象を持つかもしれないが、しかしヒップホップをベースに持つフィジカルなビートとシンプルで抒情的なメロディというAutechreの核と言える要素は健在である(中盤はややエクスペリメンタルに寄るが)。先進的なアプローチによって、伝統的な手法で作られた、いわゆる“SSW的”な音楽とは異なる聴き心地を獲得した作品。“それまでに聴いたことがない”という意味で真に新しい音楽だ。難点があるとすれば、本作を聴くことでその他のたいていの電子音楽に驚けなくなることで、そういう意味で劇薬のような側面を持つアルバムである。