2024-01-24から1日間の記事一覧

Dear Nora『Mountain Rock』(Magic Marker)

Katy Davidsonを中心とするアメリカのバンドの2ndで、2017年に13年ぶりにリイシューされた。歌心のあふれるシンプルなギターの弾き語り。ミニマルの極致とも言えるスタイルで、本作と比べればIron & Wineの作品もVashti Bunyanの作品もとても丁寧に編まれて…

The Dead Texan『The Dead Texan』(Kranky)

Stars of the LidのAdam Wiltzieと、作曲家であり映像作家でもあるChristina Vantzouのデュオによる音楽と映像を組み合わせた作品で、CDとDVDのセット。Stars of the Lidの滑らかなドローンサウンドがベースだが、よりはっきりとしたメロディーを持ち、聴き…

Cocorosie『La Maison De Mon Rêve』(Touch And Go)

アメリカの姉妹デュオによるデビュー作。チープでローファイな質感が特徴のアシッド/フリーフォーク。ファウンド・サウンドのふんだんに盛り込まれたサウンドはエクスペリメンタルだが楽曲自体はシンプルで親しみやすい。時おり挟まれる古いおもちゃの音声は…

Caetano Veloso『A Foreign Sound』(Nonesuch)

ブラジルの偉大なアーティストがアメリカのスタンダードな曲をカバーしたアルバムで、全編英語で歌われている。オーケストラをふんだんに用いた優雅な「Diana」や、エクスペリメンタルなギターが響く幽玄な「Nature Boy」、最小限の音で最大のファンクネスを…

Brian Wilson『SMiLE』(Nonesuch)

The Beach Boys『Pet Sounds』の次作として製作されたが諸々の問題によりお蔵入りとなっていた作品を新たに作り直したもの。ボーカルハーモニーを中心に据えた牧歌的なポップ。楽曲にはAriel Pinkに通じるような錯綜したところがあり、馴染むまでにある程度…

Arcade Fire『Funeral』(Merge)

カナダのバンドのデビュー作。メンバーの家族の死にインスパイアされたコンセプチュアルでエモーショナルなロック。テンションの振れ幅の大きい、スケールの大きな楽曲が特徴。穏やかに始まるオープニング「Neighborhood #1』(Tunnels)」も時間をかけて盛り…

Animal Collective『Sung Tongs』(Fat Cat)

アメリカのバンドの5th。形式にとらわれない楽曲とエクスペリメンタルなサウンドが特徴の原始的なフォーク。どの曲にも明確なメロディーがあるという点で、彼らのそれまでの作品よりも馴染みやすくはあるのだが、それでもいまだに他のどれにも似ていない楽曲…

The Wrens『The Meadowlands』(Absolutely Kosher)

アメリカのバンドの3rd。バンドが気難しい完璧主義や経済的な困難を乗り越えて作り上げたアルバムは最高にポップでドラマチックなロックとなった。そう、大文字の「ロック」である。以下の文章は読み飛ばしてアルバムの実質的なオープニングである#2「Happy…

William Basinski『The Disintegration Loops I-IV』(2062)

アメリカのアーティストによる四部構成の作品で、2002年~2003年にかけて発表された。Basinskiは80年代に自らが録音したメランコリックで短いループを磁気テープからデジタル形式に変換しようとしたが、メディアの物理的な経年劣化により変換中に音源は徐々…

The Unicorns『Who Will Cut Our Hair When We're Gone?』(Alien8)

カナダのバンドの2作目にして最終作。情緒不安定ながらきらめくポップセンスの詰まったインディーロック。おもちゃのような音色のキーボードをフィーチャーしたサウンドはローファイでごちゃごちゃしているが、その感覚はソングライティングに対してもそのま…

Underworld『1992-2002』(JBO/V2)

イギリスのグループの代表曲をまとめたベスト盤。アルバム初収録となる「Rez」など、結果的に最も強力なトラックが揃った作品のため選出。グループのこの時期の音楽の一番の特徴は「タメと解放」だ。このスタイルは映画『Trainspotting』で使用された「Born …

Ulrich Schnauss『A Strangely Isolated Place』(City Centre Offices)

ドイツのアーティストの2nd。シューゲイザーの包み込まれるような音響・ドリーミーな楽曲とエレクトロニカのキラキラしたサウンドを組み合わせた音楽性で、リニアなリズムに乗せて音の靄の中を進んでいく様子はさながら銀河鉄道に乗って天の川のただ中を進ん…

Sufjan Stevens『Greetings from Michigan, The Great Lake State』(Asthmatic Kitty)

アメリカのSSWの3rd。アーティストの故郷であり、工業都市デトロイトを擁するミシガン州を描いたコンセプチュアルな作品。StereolabやThe Sea and Cakeのような、フレーズを複雑に組み合わせたポップスと、シンプルなサウンドの美しいフォークが混在している…

Songs: Ohia『The Magnolia Electric Co.』(Secretly Canadian)

アメリカの多作なSSWであるJason Molinaの、Songs: Ohia名義での最終作。今日を生き抜く労働者階級のためのオルタナティブ・カントリー。前作の録音メンバーとツアーバンドを集め、Steve Albiniの手によってライブ録音された本作には、バンドの高い技術と熱…

The Shins『Chutes Too Narrow』(Sub Pop)

アメリカのバンドの二作目。アコギが気持ちよく掻き鳴らされるジャングリーなギターポップで、開放的なフィーリングがある。ソングライティングにはThe Zombiesや初期のTodd Rundgrenのようなノスタルジックかつドラマチックなところがあり、それは特に#5「S…

Ricardo Villalobos『Alcachofa』(Playhouse)

チリ生まれドイツ育ちのアーティストの1st。彼をミニマルテクノの大御所たらしめているものは楽曲の奇妙さと作り込まれたサウンドの小気味よさだが、それらの要素はこの1stですでにはっきりと現れており、まさにそのことが本作を特別なものにしている。1曲目…

The Rapture『Echoes』(Vertigo/DFA)

ニューヨークのバンドのデビューアルバム。ポストパンクのサウンドとダンスミュージックを接続した衝動的なロック。硬質なビートの上で刃物のように鋭いギターと鈍く光るベースが火花を散らす。DFAの担当するプロダクションはバンドのサウンドをよりフィジカ…

Prefuse 73『One Word Extinguisher』(Warp)

複数の名義を使い活発に活動するアメリカのアーティストの、Prefuse 73名義での2nd。レーベルのイメージに通じるIDMとヒップホップを組み合わせたもの。ブレイクビーツにグリッチやボーカルのカットアップを重ねたトラックは非常にファンキーで、思わず反射…

The Postal Service『Give Up』(Sub Pop)

DntelのJimmy TamborelloとDeath Cab for CutieのフロントマンBen Gibbardのデュオによる唯一作。ウェルメイドで人懐っこいエレポップ。Tamborelloは抒情的な楽曲には繊細なサウンドで静かに寄り添い、ポップな楽曲にはビビッドなサウンドで陽気なエネルギー…

OutKast『Speakerboxxx/The Love Below』(Arista)

アメリカのデュオの5作目。ユニット名を冠してはいるが、実際はメンバー二人のソロアルバムを抱き合わせたもので、ディスク二枚を合わせたランニングタイムは2時間を超える。前作『Stankonia』ですでにジャンル=OutKastとしか形容できないような折衷的でオ…

Madlib『Shades Of Blue』(Blue Note)

ヒップホップのジャンルで活躍するアメリカのDJ/プロデューサーが、老舗のジャズレーベルであるBlue Noteの音源を素材にリミックスした作品。ムーディーで風格のあるジャズがインスト・ヒップホップに巧みに再構築されている。元の音源にあったライブ感はそ…

Lightning Bolt『Wonderful Rainbow』(Load)

ロードアイランド州プロビデンスの、ドラムとベースギターのデュオによる3rd。二人だけで鳴らされていることが信じられないほどの大きく激しいサウンドが特徴。楽曲はPhilip Glassから影響を受けた反復を基調としたもので、シンプルながら催眠性があり、大音…

Lawrence『The Absence of Blight』(Dial)

Dialレーベルの共同設立者でもあるドイツのアーティストの2nd。もこもこしたサウンドのディープハウス。磨りガラスを通したような曇ったサウンドは内省的な空気を醸しているが、楽曲はキャリアでも最もクラブに接近したダンサブルなものが揃っている。曲単位…

King Geedorah『Take Me to Your Leader』(Big Dada)

イギリス系アメリカ人のラッパー/プロデューサーMF Doomが変名でリリースした2nd。本作の特徴はサンプリングを用いたトラックのわかりやすさ・ストレートなカッコよさだろう。Kanyeのソウルフルでドラマチックなネタ使いに匹敵するキャッチーさがある(今作…

James Holden『Balance 005』(EQ)

イギリスのDJ/プロデューサーの二枚組DJミックス。プログレッシブ・ハウスを代表するアーティストの出世作で、自身のレーベルであるBorder Communityの作品を紹介しつつ聴き手を壮大なトリップに誘う。ディスク1はより折衷的で、ボーカルトラックも交えて様…

The Exploding Hearts『Guitar Romantic』(Dirtnap)

アメリカのバンドの1stにして唯一作。77年から時が止まったかのようなルックスとジャケットが象徴的な、The ClashやBuzzcocksからの影響を隠さないポップなパンクロック。サウンドの探求にかかる労力はすべてメロディアスなアレンジとソングライティングに費…

Dizzee Rascal『Boy in Da Corner』(XL)

イギリスのアーティストが19歳という若さで作り上げたデビューアルバムはグライムというジャンルを世界に広めた象徴的な一枚となった。暴力的なベースを含む、存在感のある刺激的なサンプルをまばらに配置した奇妙なサウンドは原始的なパワーに満ちている。…

Caribou『Up In Flames』(Leaf)

カナダのアーティストのManitoba名義の最終作で、Caribouに名義を買えた後、2006年にもリイシューされた。Four TetのがちゃがちゃしたフォークトロニカにElephant 6のノスタルジックで人懐っこいソングライティングとサイケデリックなサウンドを混ぜ合わせた…

Animal Collective『Campfire Songs』(Catsup Plate)

アメリカのバンドの3rd……とされているが、元はバンドが明示的に結成される前の2001年に録音されている。5つの曲がワンテイクで録られており、各曲はシームレスに繋がっている。半野外のスクリーンポーチでの録音は環境音を豊富に取り込んでおり、実際にキャ…

Xiu Xiu『Knife Play』(5 Rue Christine)

アメリカのバンドのデビューアルバム。金属質なパーカッションとノイジーなサウンド、情緒不安定なボーカルが特徴の実験的なロック。1曲目からコードを無視したボーカルの絶叫とノイズの爆発に襲われ思わず顔をしかめてしまう…がこのアルバムにおいてはその…