Animal Collective『Sung Tongs』(Fat Cat)

アメリカのバンドの5th。形式にとらわれない楽曲とエクスペリメンタルなサウンドが特徴の原始的なフォーク。どの曲にも明確なメロディーがあるという点で、彼らのそれまでの作品よりも馴染みやすくはあるのだが、それでもいまだに他のどれにも似ていない楽曲・サウンドである。真に新しいものはその「新しさ」ゆえに他のもので例えることができないのだが、本作にもそれが当てはまる。しかし「意味不明」で終わらないポップさもあり、その新しさとポップさの絶妙な中間点を突いた本作は彼らのディスコグラフィー上でも特別な輝きを放っている。次作『Feels』では不定形なリズムは安定した“ビート”に変わり、楽曲もかっちりとした形を持ち全体的に安心して聴けるようになる。それは成熟の一つの形ではあるのだが、それ以前の作品群を考えるとやはり“喪失”でもあるのだ。「フリーフォーク」という言葉が真に当てはまる音楽がもしあるとすれば、それは本作をおいて他にないだろう。