Theo Parrish『Sound Sculptures Volume 1』(Sound Signature)

デトロイトを拠点として活動するDJ/プロデューサーの3rdで、CD版は前年にアナログ3枚組でリリースされたものの拡張版と言える。ラフな質感のシカゴハウスをベースにジャズやソウル、ファンクやヒップホップなどを吞み込んだもの。しかしアブストラクトなところがあり、特定のスタイルだけがはっきりと浮き出ることはない。音の密度が特別高いわけでもない。ダンスミュージックではあると思うが、強力なビートがあるわけでもなく、またはっきりとした展開も少ないため場を盛り上げられるかはわからない…。
作品の核心であり全体に共通するのは真夜中の大人っぽい雰囲気と粘っこいグルーヴだ。これらの要素が響かなければ、この作品は意味深ながらもよくわからない音楽として一蹴されてしまうだろう。逆にそれらを楽しめるのならば、本作はD’Angelo『Voodoo』のような特別な作品となるに違いない。…などと知ったようなことを述べてきたが、よくわからないままBGMとしてライトに楽しむのも全然アリだと思っています。部屋を暗くしたりお酒を入れてみたり、シチュエーションを整えて楽しみましょう。