LNRDCROY『Much Less Normal』(1080p)

(プレスリリース翻訳)


 バンクーバー在住のLNRDCROYによる、軽快なコズミック・エレクトロニカのカセットが久々に登場した。この1時間に及ぶ、透き通った記憶に残るトラック群は、ブリティッシュ・コロンビア州が春へと移り変わる、これ以上ないタイミングで発表された。
 『Much Less Normal』はLeon Campbellが都市とその周辺の自然環境に対して抱いた印象であり、古いRolandYamahaの機材を大量に使った繊細なシンセパッド、暖かく遠回しに瞑想的なキーボードアンビエンス、上昇していく好奇心旺盛なRoland JV-1080とJD-800のメロディに、YamahaドラムシーケンスとMPC駆動の運動で構成されたものである。
 より良い場所への憧憬について、あるシナリオや地域、イメージから最高の感情を引き出そうとするのと同じくらい、LNRDCROYのアンビエントテクノと90年代のユーフォリアに関する博学な知識(とディープなYouTubeチャンネル)は、ブリティッシュコロンビア州ノスタルジアと同様に、記憶の銀行として機能している。LNRDCROYのフォーラム——真の夢想家のドームは、雲に覆われた島々、バンクーバーの曇った日、チャイナタウンの喧騒、そしてAphexの古い断片といった超ビビッドなイメージを、初期のトランス、クラシックなアンビエントテクノや過去数十年の太平洋北西の先駆者(Stellar Sofa、Pilgrims of the Mind、Outersanctum(レーベル?))等とともに満載している。
 「Land, Repair, Refuel」のようなダウンビートなトラックからは大きな安心感が、「Now I'm In Love」のような広々として曇ったアンビエントドリフターからは、同様の温かみと歪んだ生命力が感じられる。ひとつ確かなことは、それが「Sunrise Market」の狂おしくファンキーなグルーヴや、「Slam City Jam」の埃っぽいレイブの記号、飛び上がって肩越し見る光景であっても、それぞれの瞬間が旅であることに違いないということだ。
 空間的な感覚、テクスチャーへのこだわり、そして物理的なゾーンを表現する優れた手腕は、スタジオ/空想と同じくらいに外の世界にいるにもかかわらず、これが真の才能の持ち主の作品であることを示唆している。『Much Less Normal』のジャンルを超えた夢のような国境地帯は、最新性、素朴さ、そして深い審美眼によって分けられている。


クラシックなアンビエントの優しく包み込まれる感じと、風の通った清涼感を両立させた気持ちの良いハウス。日本ではフローティングハウスと呼ばれたりもする、浮遊感と爽快感をあわせ持つダンスミュージックの流行を決定的なものにした作品。改めて1080pのカタログを眺めると、今まで、そこまで快適さにフォーカスしてきた訳でもないのに、いきなりこういう作品が出たりするのはおもしろい(Richardの類まれな嗅覚と審美眼のなせる業だろう)。今聴いてもその柔らかな音色と朗らかなフィーリングにはうっとりとさせられてしまう。後にFirecracker Recordingsからも少し内容を変えてリイシューされるが、たしかに曲順についてはそちらのバージョンの方が優れているかもしれない(特に心地よさに全振りした序盤の流れは強力だ)。レーベルのベストリリースのひとつ。