Ghostface Killah『Fishscale』(Def Jam)

Wu-Tang Clanのメンバーであるアメリカのラッパーの5th。ポップさとハードさのバランスの取れた完成度の高いヒップホップ。本作と名盤と名高い『Supreme Clientele』との主な違いはプロデューサー陣にある。『Supreme~』でトラックの半分近くを手掛けていたRZAは本作ではラップでの客演に留まり、空いた穴を外部のプロデューサーが埋めている。特に最多となる4曲を提供したMF DoomJ Dillaの貢献は大きく、アルバムに親密なメロウさを加えている。アルバム中盤以降はメロディアスとも形容できそうなほどで、実際、初期のStereolabを彷彿とさせるヴィンテージな音色のオルガンが印象的な#17「Jellyfish」では調子っぱずれの歌のようなものも聴くことができる。メロウに偏った際にはPete Rockのファンキーで骨太なトラックが流れを引き締めるのだが、そのあたりのバランス感覚も一流だ。音の細かな質感こそ古めかしいが、トラックやラップには普遍的な良さが宿っている。