Matt Marque『Get There』(Truckstop)

シカゴのSSWのデビューアルバム。Elliott Smithを想起させる線の細いファルセットで歌われる、ミニマルで朴訥としたフォーク。現WilcoのGlenn Kotcheなどの参加した本作はStephen PrinaやLoose Furの作品のような、シカゴ周辺のアーティストの人脈の豊かさから生まれた作品の一つとして捉えていい。一番の特徴はアルバムの流れの良さで、まるでビートテープかDJミックスかのようにスラスラと流れていく。おそらく「(どの楽曲も)非常にシンプルなこと」「大仰なイントロがなくヴァースから始まること」が要因としてあり、その上でリズム的に飽きがこないように曲順が決められているように思う……のだが、それにしてもフォークという、デジタルなイメージの少ない伝統的なジャンルでこの滑らかさは異様である。約30分という短い間ではあるが、地味ながら確実にリスナーの耳を惹きつけ続け、そしていつの間にか終わっている。サウンド的に革新的なところはないが、「滑らかかつ聴き手の注意を引く構成」という点で学ぶべきところのある作品だと思う。