Boards of Canada『The Campfire Headphase』(Warp)

イギリスのデュオの3作目。大胆なギターサウンドの導入と曲構造のポップスへの接近によってより間口が広くなっている。前半のハイライトを飾る#5「Dayvan Cowboy」はきらきらした雄大シューゲイザーのようなサウンドで、まるでFennesz「Endless Summer」をポジティブに反転させたかのようだ。#13「Slow This Bird Down」の気の遠くなるような厚いハーモニーはGasの深遠なサウンドに匹敵する。2008年にSolangeが「This Bird」にてこの曲を直接的に引用しているが、この底の知れない美しいサウンドに歌を乗せるのは骨が折れたことだろう。伝統的な楽器の導入もあってディスコグラフィー上もっとも親密でカジュアルな作品であり、まさにその点で賛否が分かれる。しかしこの世のものとは思えないようなサウンドの美しさの前では大抵の物事は些事である。永遠に浸っていたくなる作品だ。