Khotin『Hello World』(1080p)

(プレスリリース翻訳)


 エドモントン出身のDylan Khotin-Footeによる明るく繊細なデイドリームハウス。Khotin名義での1080pデビュー作は、ベッドルームに近いゾーンとクラブ向けのグルーヴの中間に位置している。
 2年前に初めてハウスとテクノの実験に着手して以来、Khotinは大量のハードウェアを用い、穏やかなアシッドとぼやけた、しかし快活なハイブリッドハウスという独自の切り口を洗練させてきた。Roland TR-505、606、707、SH-101、Juno 106、Korg MS-10、Yamaha DX7、そして様々なカシオのキーボードを使用している。
 Khotinの軽快でちりまみれのグルーヴは、ヘビーなテクノの名人への敬意と同時にベッドルーム・ポップ的な感覚を持ち、爽やかなハウスのリズムの上にサンプルを散りばめている。飛行と明るさのルーズなテーマがそれぞれのサイドに自然に流れていく(ライブ録音も混じっている);「Flight Theme」やタイトル曲「Hello World」のようなルーズなハウスドリフターは、優しいボンゴとハイハット、明るい色合いのメロディー(アルバムを通して一貫してキャッチーで、注目ポイントでもある)で浮遊する一方、「Why Don't We Talk」や「Infinity Jam」など重くダークなテクノヒッターは宇宙のハードウェアヴァイヴの独特なテイストを持っている。


Khotinの特徴はムードと音色に対する並外れたセンスだ。それが最も発揮されたのが#2「Ghost Story」で、今作から一曲を選ぶとするならばこれになるだろう。楽曲の最初から最後まで一定のメロディーを繰り返す、いわば楽曲の屋台骨のようなパートがあるのだが、その音色の美しいことといったらない。意図的に少し音割れさせているようだが、音割れしてなお美しい……というか音割れによって暖かみを増しているまであるようだ。そして重ねられる子どものリーディング。曲名と合わさりどこか懐かしいような不思議なムードが醸される。また#4「Flight Theme」では中盤でBoards of Canadaを想起させる音色のメロディーが現れる。BOCも雰囲気にフォーカスした小曲を数多く手掛けていたことを思うと、彼の影響元の一つだったのかもしれない。
本作は全編に渡ってこのようにムードにフォーカスしている訳ではない(ムードに関しては次作『New Tab』にて追究される)のだが、しかし音色に関する感性は別で、アルバム全体を明るく彩っている。開放的なクラブと白昼夢のベッドルームを繋げた作品はダンスミュージックのファンのみならずエレクトロニカのファンにも広く訴えるだろう……ということで、見事LNRDCROYに続く人気作となり、同年にFauxpas Musikよりヴァイナルで再発されている。