Keita Sano『Holding New Cards』(1080p)

(プレスリリース翻訳)


 若き日をジャズと過ごし、沖縄で陶芸を学んだ「左利き」の岡山人プロデューサー、サノケイタによる、広く奇妙な異種混交ハウス&テクノの70分超大型カセット。現在、MPC、Electribe-SX、古いMTR、そして多くのエフェクターを使って音楽制作をしている。ジャズは今でも彼にインスピレーションを与えるが、このエレクトロニクスの濃密なブレンドは、独特の自由さと一定のメロディーセンス以外、ジャズの兆候をあまり感じさせない。
 「Onion Slice」はジャングルを切り刻んでミニチュアのような壮大なシンセのうねりを作り出し、「Search」は100bpmのレゲエにリバーブドラムとボーカルの断片を加えたような曲。「Escape to Bronx」ではクラシックアシッドバイブを取り入れ、「African Blue」ではゆるくパーカッシブでスローバックしたクラブのグルーヴで、サノの愉快な実験のエクスタシー全般を取り入れている。
 「Everybody Does It」やタイトル曲「Holding New Cards」など、様々なムードとジャンルが混在するこの作品にはノイズが多く含まれ、特にその質感の高さが際立っている。この最新作の集大成は、一般的なノイズと飽和の概念についても考えを巡らせており、熟練と無邪気さを備え、最上の喜びを味わえる作品だ。


レーベル唯一の日本人アーティストによるリリース。70分弱という大作でありながら全編に渡って奇妙なアイデアで溢れている大変な力作だ。「Everybody Does It(Version)」の人を食ったようなツマミ操作など、他で見たことのないような演出やサウンドが次々と現れる。それが必ずしも快適さには繋がらないという点でやや人を選ぶが、少なくとも一時間以上はスリリングな瞬間が約束されており、それだけで十分価値がある。全体にうっすらと共通しているのはダブ/レゲエのどこかとぼけたようなムードで、おおらかな実験精神もそういったジャンルに由来しているのかもしれない。どちらかといえば夏向けの、充実した作品集だ。