Mind Dynamics『Precision Instruments』(1080p)

(プレスリリース翻訳)


 "器":統一された、集団的な行動と意識。自己の喪失、ケーブル、ミキサー、機械を交差する流れの交換、純粋な活力の節目から現れる一つの精神。"
 Daniel FreshwaterとBrian Whatevererによるライフスタイルを重視するブルックリン出身のデュオは、ここしばらくエレクトロニック/ダンスミュージックを通してイメージ/地位にとらわれた理想と関わってきた。『After-Sport』のような以前のリリースでは、蒸気の雲の中を漂い、滑らかさと荒々しさバランスを取っていたが、『Precision Instruments』の特徴づけているデジタルなガレキ、突然変異的なサンプル、熱狂的でメタリックなパーカッションは、イメージや地位にとらわれたライフスタイル経済の腐敗と解体を深く掘り下げている。
 「Precision Instruments』は、めちゃくちゃだが筋肉質なサンプルの反復の目まぐるしいセットを通して、輝くハイテクの美学が、実体のないダンスの記号と、常に覆され、引き延ばされ、変質させられる、全面的なディストロイド的狂乱である。バラバラのリズムが積み重なり、ロボティックでサイバネティックなクラブの廃墟が、Oculus Riftで見るのに最適なレベルまで劣化され、絶えず変化するぼやけの中で溶けていく。
 これらの壊れた過剰主義的な脱構築は、暗いながらも活気があり、自己の探求やディストピックな資本主義的現実に照準を合わせているため、決して絶望的ではない。むしろ、『Mind Dynamics』はたいてい砕けたiPhoneの画面の雰囲気だが、時おり崩れたテクスチャーから大きな静寂の瞬間を出現させるのだ。
 独特の弾力性と歪んだ空間感覚は、Eric Copelandの反転ダブやActressの散漫なテクノ、Pete Swansonの最近の壊れた倉庫業務と同様に、Night Slugsやその他の過剰さへの狂熱を思い起こさせるかもしれない。非常に乱雑で重く処理されたものではあるが、『Precision Instruments』の6つの録音(全てライブ)の中心にあるのはテクノである。


珍しくストレートにエクスペリメンタルなテクノで、一般的なポップの領域からはみ出した、錯綜としたサウンド・曲構造を持つ。なんだかんだで一定のポップさを維持していることが1080pというレーベルの強みの一つだと思うが、そこから外れているという点でこの作品も異色だと思う。作品に一貫しているのは細かな金属質のビートだけで、それ以外のサウンドは容赦なく変調され、また乱打される。意味不明と切り捨てられても仕方ないが、本作のサウンドの変化は連続的なもの——つまり耳で追えるものであり、注意深く追い続けることでまるで視界がぐんにゃりと歪んでいくような奇妙な感覚を得ることができる。それは非常にサイケデリックな体験で、もしかしたら危険な薬物を服用したらこんな感じになるのかもと思わせる。インスタントに楽しめる類の音楽ではないが、一度は集中して聴く価値のある作品だ。