2024-01-24から1日間の記事一覧

Wilco『Yankee Hotel Foxtrot』(Nonesuch)

シカゴを拠点とするバンドの4作目。ベースは牧歌的なロックだが、Loose Furからのつながりで製作に参加したJim O'Rourkeによって繊細で不思議なサウンドが加えられている。#1「I Am Trying to Break Your Heart」が象徴的だが、本作でのO'Rourkeの仕事はまさ…

The Streets『Original Pirate Material』(679/Locked On)

イギリスのアーティスト、Mike Skinnerによるプロジェクトの1st。UKガラージをベースにしたトラックに乗せて身近な日常を描写するヒップホップ。UKのクラブミュージックに影響を受けたサウンドはUSのヒップホップを主に聴いてきた人には新鮮に響くだろう。#7…

Sonic Youth『Murray Street』(Geffen)

アメリカのバンドの12枚目のアルバム。Jim O'Rourkeの正式なメンバー加入が影響したのか、バンド史上もっともメロディアスな作品となっている。ノイズを作曲に組み込んだエクスペリメンタルなロックという基本路線は変わらないが、今作は「ギターが(ボーカ…

Schneider TM『Zoomer』(City Slang)

ドイツのアーティストの2nd。ボコーダーで加工されたボーカルが特徴的なエレポップ。グリッチを通過した細かな、そして遊び心のある音遣いが耳をくすぐる。8曲中5曲でボーカルがフィーチャーされているが、それ以外のインストもメロディアスで親しみやすい。…

Michael Mayer『Immer』(Kompakt)

ドイツのレコードレーベルKompaktのオーナーの一人によるDJミックス作品。シンプルなリズムに滑らかなウワモノが絡む上品なハウスがコンパイルされている。Kompakt以外のレーベルの作品も当然収録されているが、音楽性としてはKompaktレーベルの柔らかで親密…

Mclusky『Mclusky Do Dallas』(Too Pure)

ウェールズのスリーピースによる二枚目。躁的なボーカルが耳を惹く豪快なロック。バンドのささくれ立った激しいサウンドの録音はSteve Albiniの手による。ボーカルのパフォーマンスも含めPixiesとよく比較される(実際よく似ている)が、決定的に違う点はユ…

Max Tundra『Mastered by the Guy at the Exchange』(Tigerbeat6)

イギリスのアーティストの2nd。陽気でリズミカルなエレクトロポップ。初めて本格的にボーカルを導入した本作はどこを切り取ってもメロディアスで、キャッチーなフックに満ちている(そもそもシンセのビビッドな音色自体がキャッチーだ)。オープニングの「Me…

The Libertines『Up the Bracket』(Rough Trade)

イギリスのバンドのデビューアルバム。生々しく荒々しいガレージ・パンク。荒削りな演奏には原始的なグルーヴがある。プロデューサーのMichael Jonesは彼が在籍していたThe Clashに通じる生々しく迫力ある音響を提供している。サウンドの粗野なイメージとは…

Keith Fullerton Whitman『Playthroughs』(Kranky)

Hrvatskiとしても知られるアメリカのアーティストの本名名義の作品。ギターの音を様々な機材で加工して作られた(本人のHPにて製作プロセスが解説されている)、美しいドローンアンビエント。ゆっくりじっくりと展開する楽曲が聴き手の意識を引き延ばしてい…

Interpol『Turn On the Bright Lights』(Matador)

ニューヨークのバンドのデビューアルバム。各楽器の有機的な絡みで聴かせるポストパンクで、オン・オフの効いたベースのプレイがバンドを推進させる。リバーブのかけられたサウンドは暗闇に灯った光のように遠く響いていく。ボーカル含め、Joy DivisionやEch…

Horsepower Productions『In Fine Style』(Tempa)

ロンドンのグループによるデビューアルバム。イギリスのクラブで流れる音楽を広く深く吸収した彼らの産み出したスタイルは後に「ダブステップ」と呼ばれることになる(事実、その音楽がメディアから初めてダブステップと呼称されたグループのようだ)。疾走…

The Flaming Lips『Yoshimi Battles The Pink Robots』(Warner Bros.)

アメリカのバンドの10作目。ソフトなサウンドで奏でられるファンタジックなサイケデリック・ポップ。プログラムされたストリングスとリバーブの繭の中で、安定したミドルなリズムに乗せてドラマチックで美しいメロディーが滔々と流れていく。柔らかな音像に…

Ekkehard Ehlers『Plays』(Staubgold)

ドイツのアーティストによる、特定の芸術家からインスピレーションを受けて製作された一連のシングル・EPをまとめたもの。エクスペリメンタルな現代音楽/アンビエント。細かな電子音と生音の組み合わせによる抽象的な曲から、分厚いサウンドの荘厳なドローン…

Deerhoof『Reveille』(Kill Rock Stars)

アメリカのバンドの4作目。アヴァンギャルドとポップを自由に行き来するフリーキーなロック。ローファイなサウンドで奏でられる楽曲群からは雰囲気のあるイントロ・アウトロが排され、コアとなるメロディーやアンサンブルだけが剥き出しにされている。結果、…

Broken Social Scene『You Forgot It in People』(Arts & Crafts/Paper Bag)

カナダのアーティストが集った大所帯バンドの2nd。ジャンルを越えた数多のアイデアをロックのフォーマットにまとめ上げたもの。この一枚のアルバムの中にGY!BEやRadiohead、TortoiseやSonic Youth、果てはFenneszなどのサウンドが詰まっているのだ。それだけ…

The Books『Thought for Food』(Tomlab)

ギタリストとチェリストのデュオによるデビューアルバム。弦楽器と音声のサンプリングを組み合わせた奇妙で愛らしい……ポップス? Matmos同様サンプリング主体のアプローチではあるが楽曲のスタイルは異なり、あちらがテクノだとすればこちらはフリーフォーク…

Boards of Canada『Geogaddi』(Warp)

イギリスのデュオによる2作目。ヒップホップを下敷きにしたビートに薄い靄のようなコードや、音声・環境音のサンプリングを被せた幻想的なエレクトロニカ。ディスコグラフィー上もっともサイケデリックで、トリップ感が強い。彼らについては結局のところ、コ…

Beck『Sea Change』(DGC/Geffen)

アメリカのSSWの8th。内省的・感傷的なフォークで、その背景には9年間にも及んだ彼のスタイリストとの交際関係の終わりがあったようだ。『Histoire de Melody Nelson』をベースに繊細なエレクトロニクスを加えたようなサウンドは柔らかく浮遊感があり、全体…

Akufen『My Way』(Force Inc)

カナダのアーティストの、Akufen名義での2nd。マイクロハウスと呼ばれる、極めて小さなサンプリングを活用したハウスで、本作ではラジオから録音された素材が2000以上もの数使われているという。#4「Deck the House」は一瞬ごとにサンプリングが展開していく…

...And You Will Know Us by the Trail of Dead『Source Tags and Codes』(Interscope)

アメリカのバンドの3作目で、メジャーレーベル移籍後初のアルバム。シリアスな抒情性をまとったハードコア~オルタナ。シビアな評価をすることで知られるPitchforkで10点満点を獲得したことが今も語られているが、内容も評価に劣らずすばらしいものだ。ハー…

2 Many DJs『As Heard on Radio Soulwax, Pt. 2』(Pias)

ベルギーの兄弟ユニットによるDJミックス作品。ある曲のボーカルトラックを別の曲のインストゥルメンタルに被せる「マッシュアップ」という手法を全面的に用いて話題となった。多彩なジャンルの著名アーティストの楽曲が多く使用されており、ポップミュージ…

The White Stripes『White Blood Cells』(Sympathy for the record industry)

アメリカのデュオによる3rd。「ロックンロール」とされる音楽の、最大公約数的なサウンド・楽曲をストレートに捉えて形にした作品。革新性やユニークさはないのだが、そのシンプルで原始的な有り様がガレージロック・リバイバルという大きな流れを巻き起こし…

Tim Hecker『Haunt Me, Haunt Me Do It Again』(Substractif)

バンクーバー出身のアーティストの本名名義での1st。重厚なドローンを主体にグリッチの要素を取り入れたアンビエント。Stars of the LidとFenneszの同年作の中間のようなサウンドで、革新的なところはないのだが非常に完成度が高い。楽曲を掴みやすくするた…

Super Furry Animals『Rings Around the World』(Epic)

ウェールズ出身のバンドの5作目で、メジャーデビュー作。多様なジャンルのサウンドを取り入れつつも、最終的には世界的な射程距離を持つポップスとして出力されるところはBlur『13』に近いものがある。BlurやOasisなどのブリットポップ勢に通じるポップセン…

The Strokes『Is This It』(RCA)

ニューヨークのバンドのデビューアルバム。シンプルで勢いのあるギターロック。WireのミニマルなポストパンクとTelevisionの各楽器が有機的に絡み合うギターロックを組み合わせたようなスタイルで、『White Blood Cells』同様、当時の音楽シーンにガレージロ…

Stereolab『Sound-Dust』(Duophonic)

イギリスとフランスを出自に持つバンドの7作目。故Mary Hansenの参加した最後のアルバムはクラウトロックの「反復の美学」を胸に抱いたループ主体のスタイルから離れ、より歌やメロディーにフォーカスした内容になった。ループのくびきから解放された楽曲は…

Stars of the Lid『The Tired Sounds of...』(Kranky)

テキサス州オースティンで結成されたデュオの6作目。ギターのフィードバックにストリングスやホーンを加えた重厚なドローン・アンビエント。繰り返しを基調とするキャッチーな構造はほぼないが、音色の繊細でゆっくりとした変化が聴き手の意識を掴んで離さな…

Rufus Wainwright『Poses』(DreamWorks)

アメリカのSSWの2nd。豊かなテノールをフィーチャーしたチェンバーポップ。オペラに影響を受けた、ドラマチックながらもゆったり・ふっくらとした楽曲は伸びやかなボーカルと相性バツグンだ。音楽一家の人脈もあって多彩なゲストが参加しており、作品の音楽…

Radiohead『Amnesiac』(Capitol)

イギリスのバンドの5thで、前作『Kid A』と同時期に録音されている。前作にはあった流れの良さ・アルバムとしてのまとまりが失われている点でポップさという観点から見ると劣るのだが、代わりにサウンド・楽曲のユニークさは際立っており、「他に似たような…

The Other People Place『Lifestyles of the Laptop Café』(Warp)

アメリカのプロデューサーJames Stinson(Drexciyaのメンバーとして知られる)のソロアルバム。幻想的な雰囲気の、メロディアスなデトロイトテクノ~エレクトロ。ややゆっくり目のテンポと、森林や海中に差し込む光のように揺らめくウワモノが親密さを演出す…