Dialect『Gowanus Drifts』(1080p)

(プレスリリース翻訳)


 「焼け落ちた巨大な輸送用倉庫の隣にイケアストア、ホールフーズの隣にスクワット、外に死んだ犬のいるアルチザンフラワーショップ。ゴミは風に乗り、霧笛が水面を吹き抜ける。サイレン、ポルノショップ、倉庫、刑務所、犬の吠え声、駐車場、ファーストフード、高速道路、焼き払われたマッサージ店、古タイヤ、金網、空きビル、バス発着場、流れる生ごみ...。」
 Tasty Morselsからリリースされた前作『Advanced Myth』の「オンラインミックス」のようなコンセプトを引き継ぎ、よりダークで豊かな雰囲気、質感、ムードとグロテスクな美しさの旅に出たアブストラクトアーティストDialect (別名Andrew PM Hunt) は、そんな困惑したエクスタシーを表現している。
 ブルックリンのレッドフック付近で録音されたこの曲は、故郷のリバプールを思い出させる造船所のポストインダストリアルな風景に魅了されている。特にゴワヌスはアメリカ的でありながら、イーストリバーの対岸にあるウォール街の象徴的なスカイラインとは全く対照的に感じる。ゴワヌスは、雑草や土が噴出したひび割れた歩道をカミソリの針金が吹き、空のビルボードと巨大な高架橋が頭上に迫り、老朽化して朽ち果てている。
 40分のスナップショット『Gowanus Drifts』では、これらのイメージをサクッと聴ける。この作品はハントにとっての、ゴング、クラスター、タンジェリン・ドリームなどのサイケデリックな探求に始まり、ASMR、アンボクシング・ビデオ、Xboxゲームプレイ・レコーディングなどのオンライン文化における深いネットワーク音楽のムーブメントにまでおよぶドローン連続体のような存在だ。
 Dialectは、チターの即興演奏、フィールドレコーディング、サクソフォンコンポジションを彫刻的に扱い、ゆるやかな流動性をもって互いに分解・再構築する。天使のようなヴォーカルがDialectの独特の焦げたFMシンセから立ち上がり、半ば記憶されたReichianのループが水面を漂い、スモッグのような風に乗って漂うのである。


ブルックリンのゴワヌスという地域をコンセプトに据えた抽象的かつエクスペリメンタルなアンビエント。犬の鳴き声で幕を開ける本作は、プレスリリースの第一段落と同様にゴワヌスの風景や文化の変遷を表現しているらしい。注目すべきはサウンドの引き出しの多さで、OPNのような電子音のアルペジオが出てきたかと思えば牧歌的なギターのストロークとホーンが重ねられ、高圧的なドローンに潰されるやいなや神聖なコーラスワークに包まれる(その遠くで騒がしいレイブが開かれている)。…脈絡のない夢のようでまったく掴みどころがないのだが、それゆえに何度も聴きたくなる。そんな作品だ。